診断のポイント
【1】年齢は30~40歳台に好発するが,小児から高齢者まで広くみられる。肛門周囲膿瘍で発症する。肛門周囲膿瘍の症状は,肛門周囲の突然の痛みを伴う腫脹と発赤,発熱である。
【2】痔瘻の症状は,持続的な膿の排出,間欠的な肛門周囲の腫脹や圧痛である。
【3】指診にて,肛門内に挿入した第2指と,肛門外の第1指にて,痔瘻の原発口,広がり,活動性を指摘する。
【4】肛門周囲膿瘍で強い痛みを伴っている場合は,まずは切開排膿を行う。ドレナージにて痛みが落ち着いてから,痔瘻の治療について専門医に相談する。
【5】皮膚の表面が壊死で黒くなったり,境界不明瞭な発赤が広範囲に及んだり,腐敗したような悪臭を伴う場合は,Fournier症候群を発症している可能性がある。専門医のいる全身管理可能な総合病院へ緊急に転院させる。
症候の診かた
痔瘻の診断は,まず外来診察で行われ,手術時が最終診断となる。
【1】肛門周囲膿瘍は切開排膿する。
【2】視診で瘻孔や硬結をみる(図1図)。
【3】指診で瘻管を触知する。
【4】手術時には,麻酔下に瘻管走行,原発口を詳しく診断する(図2図)。
検査所見とその読みかた
【1】視診,触診,肛門指診
❶2次口を有する痔瘻は視診だけで診断が可能である。
❷指診では,肛門外の第1指と肛門内の第2指の双指診で瘻管を診断する。
【2】肛門鏡検査:発生原因となる原発口を確認するために行う。
【3】経肛門的超音波検査:肛門から超音波用プローブを挿入して,肛門周囲膿瘍,痔瘻を診断する。正診率は89.5%と報告されている。
【4】CT:肛門周囲膿瘍の診断に有用である(図3図)。
【5】MRI:横断像や冠状断像,矢状断像が自由に得られ,複雑な痔瘻の診断に有用である(図4図)。
【6】瘻孔造影,色素注入
❶2次口より造影剤(ガストログラフイン®)を注入して撮影し,瘻管の広がりや走行,原発口を確認する。
❷術中では,2次口