診断のポイント
【1】ヒトの肝臓に感染し,肝炎を起こすウイルスとしてA~E型までの5種類が判明している。そのうちD型肝炎ウイルス(HDV)は,B型肝炎ウイルス(HBV)の共在が必要な不完全なウイルスである。
【2】A型(HAV)およびE型肝炎ウイルス(HEV):ウイルスを経口摂取することにより感染する。肝炎期のみでなく,無症状期や肝炎沈静後も数週間はウイルスの便中への排泄が続くため,この間は感染拡大の可能性があり,家族内発症も頻繁にみられる。
【3】HBVおよびC型肝炎ウイルス(HCV)
❶血液や体液を媒体として感染する。持続感染が成立すると慢性肝炎から肝硬変へ移行する可能性がある。現在は,輸血や医療機関での医原性感染のリスクはほぼない。
❷HBVの感染経路:持続感染した母親からの母児感染,乳幼児期の水平感染,成人期の性感染症が考えられる。新生児から乳幼児にかけての感染は,持続感染(キャリア化)しやすい。成人期の感染は,ほとんどが一過性の不顕性感染で経過するが,急性肝炎を発症する場合もある。
❸HCVの感染経路:HBVよりも感染力が弱く,母児感染や性行為感染はまれである。現在は,麻薬乱用者の注射針の回し打ちによる感染,不衛生な状態での刺青(いれずみ)やピアス装着のための穴あけ作業による感染,出血を伴う民間療法による感染などの新規感染者が認められる。
緊急対応の判断基準
【1】急性肝不全例:集中治療室での集学的治療が必要となり,肝移植も視野に入れた対処を要するため,専門医療施設へ移送する。
【2】通常型だが急性肝不全への移行が危惧される症例:早めに専門医療施設と連携をとり対応にあたる。
症候の診かた
【1】急性疾患としては臨床的に軽度で,一般的には気づかれないため,偶然診断に至るか慢性肝障害へと進展してから発見されることが多い。急性から慢性への移行は,通常無症状である。
【2】急性期症状
❶一般的なか
関連リンク
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