診断のポイント
【1】正常肝ないし肝予備能が正常の症例に肝障害が生じてプロトロンビン時間(PT)が40%以下ないしはINR値1.5以上を示すものを「急性肝不全」と診断する(表1図)。
【2】急性肝炎は,肝炎ウイルスの急性感染によって,肝臓にびまん性の急性炎症を引き起こす疾患である。
【3】急性肝不全は,非昏睡型と昏睡型に分類される。劇症肝炎は,昏睡型に含まれる(表2図)。
【4】昏睡型には急性型と亜急性型の2つの病型がある。
【5】肝炎以外の成因には,薬物中毒,循環不全,悪性腫瘍の肝浸潤,代謝性,術後肝不全がある。
緊急対応の判断基準
【1】昏睡型:非昏睡型は比較的予後が良好であるが,昏睡型は専門施設(人工肝補助を含めた集学的治療が可能な施設)に至急移送すべきである。
【2】非昏睡型でも劇症化が危惧される場合
❶PT 40%以下
❷血清総ビリルビンの高値,および直接ビリルビン/総ビリルビン比(D/T比)の低下
❸肝萎縮
❹持続する強い自覚症状(食欲不振,全身倦怠感など)
【3】岩手医科大学の肝炎劇症化予知式で20%を超えた場合(http://intmed1.iwate-med.ac.jp/calc/calc.html▶)
【4】PT 60%以下ないしPT-INR 1.3以上を示す急性肝障害:重症化する可能性があり,急性肝不全に進展する前に,早めに肝臓専門医にコンサルテーションするのが望ましい(J Gastroenterol, 2018 [PMID: 29260300▶])。
症候の診かた
【1】急性肝炎では発熱,感冒様症状,消化器症状,全身倦怠感などの初発症状で発症し,血清AST,ALT上昇とともに黄疸が出現し,肝炎極期を過ぎると自覚症状は軽減する。
【2】劇症化する例では強い自覚症状が持続することが多いが,亜急性型では軽微なことも多い。
【3】黄疸の進行とともに発熱,頻呼吸,肝性口臭,肝濁音界の縮小,浮腫,