診療支援
診断

慢性肝炎
Chronic Hepatitis
竹原 徹郎
(大阪大学大学院教授・消化器内科学)

診断のポイント

【1】6か月以上持続するトランスアミナーゼ値高値。

【2】慢性肝障害を引き起こす原因となる疾患の存在。

【3】慢性炎症に伴う肝線維化の存在。

緊急対応の判断基準

【1】慢性肝炎の診断や対応に苦慮する場合や病態把握が困難な場合:肝炎専門医療機関へ紹介する必要がある。肝炎専門医療機関は,ウイルス性肝炎の専門的な診断,治療方針の決定,抗ウイルス療法の実施を行う。また肝疾患にかかる一般的な医療情報の提供を行う肝疾患診療連携拠点病院が全国に71施設整備されており〔2018(平成30)年4月1日現在〕,診療方針の決定の際にコンサルテーションすることができる。

【2】B型慢性肝炎の急性増悪により急性肝不全症状を呈した場合:専門医療機関への紹介が必要である。特に免疫抑制・化学療法中のB型肝炎ウイルス(HBV)の再活性化は迅速な対応が必要である。プロトロンビン時間の延長,ビリルビン値やアンモニア値の上昇,肝性脳症や腹水などの出現が認められれば,すみやかに専門医療機関に移送する。

【3】肝硬変に伴う合併症や,肝癌の発症を疑う場合:慢性肝炎は,肝硬変や肝癌に進展する。このような場合には専門医療機関への紹介を考慮する。

症候の診かた

【1】慢性肝炎では自覚症状を伴わないことがほとんどであるが,倦怠感や食欲不振,非特異的な上腹部不快感を伴うことがある。

【2】肝線維化が進展すると,脾腫やくも状血管腫,手掌紅斑などがみられるようになり,門脈圧亢進症,腹水,脳症などの肝硬変の合併症を認めるようになる。

検査所見とその読みかた

【1】肝炎ウイルスマーカー

❶慢性肝炎を引き起こす肝炎ウイルス:HBV,C型肝炎ウイルス(HCV),D型肝炎ウイルス(HDV)である。

HBV:主に母子感染などの幼少期の感染を契機に持続感染する。

HCV:輸血など血液・体液を介する感染を契機に持続感染する。

HDV:HBVと重感染し慢性肝炎

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