診断のポイント(表1図)
【1】中年女性に好発する慢性肝炎。
【2】AST・ALT高値。
【3】抗核抗体,抗平滑筋抗体陽性。
【4】血清IgG高値。
【5】急性肝炎で発症することもある。
緊急対応の判断基準
【1】重症度分類が定められている(表2図)。重症と診断された症例は対応可能な医療機関へ搬送する。中等症の症例で高度の黄疸がみられる場合にも搬送を考慮する。
【2】急性肝炎様に発症した場合,抗核抗体陽性,IgG高値など特徴的な所見がみられない症例が多い。この場合診断・治療の遅れから肝不全へ進行してしまうため,血清学的に診断のつかない重症急性肝炎では自己免疫性肝炎の可能性および肝生検を考慮する。
症候の診かた
【1】全身倦怠感:しばしば全身倦怠感,易疲労感,食欲不振などの自覚症状を伴う。
【2】黄疸:急性肝炎様に発症する場合には黄疸がみられる。
【3】自他覚症状を全く伴わず,偶然に健康診断などで肝障害を指摘され受診することも少なくない。
【4】すでに肝硬変へ進展した症例では診断時から浮腫,腹水などの非代償性肝硬変症状がみられることもある。
検査所見とその読みかた
【1】スクリーニング検査
❶肝酵素,ことにAST・ALTが上昇する。
❷胆道系酵素(ALP・γ-GTP)の上昇は多くの場合軽度である。
【2】絞り込む検査
❶抗核抗体が陽性となり,血清IgGが高値をとる。
❷抗平滑筋抗体の陽性率も高い(ただし保険未収載)。
❸慢性肝炎の原因となるB型肝炎,C型肝炎は,HBs抗原・HCV抗体を測定し,陰性であることを確認して除外しておく。
【3】画像検査
❶腹部超音波検査では自己免疫性肝炎に特徴的な所見はなく,他の成因による慢性肝疾患同様,肝辺縁の鈍化,肝表面の凹凸,内部エコー粗雑などの所見がみられる。進行すれば肝硬変の所見を呈する。腹部CTも同様である。
❷脂肪肝の所見を認める場合もあるが,両者が合併する症例もあり,脂肪肝があっ