診療支援
診断

原発性胆汁性胆管炎
Primary Biliary Cholangitis (PBC)
大平 弘正
(福島県立医科大学教授・消化器内科学講座)

診断のポイント

 診断基準を表1に示す。

【1】中高年女性に好発。

【2】血清胆道系酵素(ALP,γ-GTP)とIgMの上昇。

【3】抗ミトコンドリア抗体(AMA)陽性。

【4】肝組織で慢性非化膿性破壊性胆管炎(chronic non-suppurative destructive cholangitis:CNSDC)。

【5】Sjögren症候群,慢性甲状腺炎など自己免疫性疾患の合併。

症候の診かた

【1】皮膚瘙痒感:初発することが多い。

【2】疲労感,全身倦怠感:患者からの訴えは少ないが,症状が強いことも特徴である。

【3】門脈圧亢進症状:脾腫,食道胃静脈瘤など高頻度に出現する。

【4】皮膚黄色腫,骨粗鬆症:胆汁うっ滞の進行により,脂質異常症やビタミンDの吸収低下に伴い出現する。

【5】黄疸:肝不全徴候であり,出現後は進行性であることが多い。

【6】乾燥症状,関節痛:合併する他の自己免疫性疾患の症状を伴うことも多い。

検査所見とその読みかた

【1】スクリーニング検査:血液検査で胆道系酵素(ALP,γ-GTP)の上昇がある場合,腹部超音波検査などの画像検査を行いながら他の疾患を除外する。本症を疑う場合,AMAや抗核抗体(ANA)の検査を行う。AMAは約90%の症例で陽性となる。また,IgMの上昇を認めることが多い。

【2】組織学的検査:肝組織検査では,肝内小型胆管(小葉間胆管ないし隔壁胆管)にCNSDCを認めることが特異的な所見とされる。組織学的病期分類には活動度と病期の両者を取り入れたNakanumaらの分類が推奨される。

確定診断の決め手

【1】胆道系酵素上昇。

【2】AMA陽性。

【3】肝組織でのCNSDC,肉芽腫,胆管消失。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】薬物性肝障害()

❶薬物服用後に肝機能異常が出現。

❷薬物の中止による肝機能改善。

【2】閉塞性黄疸:肝内外胆管の拡張〔腹部超音波,CT,MR胆管

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