以下,肝障害がみられる場合のWilson病のポイントについて記載する。
診断のポイント
【1】3歳以上。
【2】トランスアミナーゼ上昇。
【3】血清セルロプラスミン低値。
【4】Kayser-Fleischer(K-F)角膜輪。
【5】錐体外路症状。
症候の診かた
【1】K-F角膜輪があれば本症を強く疑うが,小学生低学年の若年者では認められないことが多い。
【2】日常生活に支障をきたすような歩行障害,構音障害,流涎や精神症状がみられる。
検査所見とその読みかた
【1】トランスアミナーゼ(ALT,AST):上昇する。特に小児期には必須である。肝硬変になるとむしろ低下し,基準範囲内になる場合があるので注意する。
【2】腎障害:学校健診による尿スクリーニングで,血尿や蛋白尿が本症の発見の端緒となる例がある。
【3】血清セルロプラスミン:低値であり,多くは0~20mg/dLである。セルロプラスミン正常例は約5%あるとされているが20mg/dL以上の場合は後述する特発性銅中毒症の場合がある。
【4】尿中銅:24時間蓄尿では高値となり診断的価値はあるが,スポット尿は不安定であり診断的にならない。
【5】ビリルビン値の上昇と貧血(溶血性貧血):血液検査でこれらがあれば重症である。特に溶血性貧血を伴い急速に肝不全となる劇症肝炎型Wilson病であれば,肝移植が必要になることもある。
確定診断の決め手
【1】Wilson病の家族歴がある。
【2】トランスアミナーゼ値の異常と低セルロプラスミン値:これらがあればWilson病である可能性は高い。
【3】肝組織検査(肝生検)で肝臓中の銅含有量が200μg/g以上。
【4】ATP7B遺伝子解析:有用な診断法であるが,遺伝子解析でも既知の変異が同定できない例もある。
【5】頭部MRIで大脳基底核に異常信号がみられる。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】過食性の脂肪肝:過食による肥満歴があ
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