診療支援
診断

先天代謝異常による肝障害
††
Liver Disease due to Inborn Errors of Metabolism
乾 あやの
(済生会横浜市東部病院・小児肝臓消化器科部長)

 以下,肝障害がみられる場合のWilson病のポイントについて記載する。

診断のポイント

【1】3歳以上。

【2】トランスアミナーゼ上昇。

【3】血清セルロプラスミン低値。

【4】Kayser-Fleischer(K-F)角膜輪。

【5】錐体外路症状。

症候の診かた

【1】K-F角膜輪があれば本症を強く疑うが,小学生低学年の若年者では認められないことが多い。

【2】日常生活に支障をきたすような歩行障害,構音障害,流涎や精神症状がみられる。

検査所見とその読みかた

【1】トランスアミナーゼ(ALT,AST):上昇する。特に小児期には必須である。肝硬変になるとむしろ低下し,基準範囲内になる場合があるので注意する。

【2】腎障害:学校健診による尿スクリーニングで,血尿や蛋白尿が本症の発見の端緒となる例がある。

【3】血清セルロプラスミン:低値であり,多くは0~20mg/dLである。セルロプラスミン正常例は約5%あるとされているが20mg/dL以上の場合は後述する特発性銅中毒症の場合がある。

【4】尿中銅:24時間蓄尿では高値となり診断的価値はあるが,スポット尿は不安定であり診断的にならない。

【5】ビリルビン値の上昇と貧血(溶血性貧血):血液検査でこれらがあれば重症である。特に溶血性貧血を伴い急速に肝不全となる劇症肝炎型Wilson病であれば,肝移植が必要になることもある。

確定診断の決め手

【1】Wilson病の家族歴がある。

【2】トランスアミナーゼ値の異常と低セルロプラスミン値:これらがあればWilson病である可能性は高い。

【3】肝組織検査(肝生検)で肝臓中の銅含有量が200μg/g以上。

【4】ATP7B遺伝子解析:有用な診断法であるが,遺伝子解析でも既知の変異が同定できない例もある。

【5】頭部MRIで大脳基底核に異常信号がみられる。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】過食性の脂肪肝:過食による肥満歴があ

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