アルコールの長期にわたる過剰の摂取により発症する肝障害で,アルコール性脂肪肝,アルコール性肝線維症,アルコール性肝炎,アルコール性肝硬変,アルコール性肝癌に分類される。
診断のポイント(表1図)
【1】飲酒量
❶純エタノールで60g/日以上(日本酒換算で平均3合以上)を5年以上。ただし女性やアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)活性欠損者では40g/日程度の飲酒量でも罹患しうる。
❷本人への問診では大量飲酒を否定して過少申告することが多いため,家族からの飲酒量聴取が重要となる。
【2】禁酒による検査値の改善:禁酒(通常まずは2週間程度)によりAST,ALT,γ-GTP,肝腫大が改善すること。
【3】肝炎ウイルスマーカー,抗ミトコンドリア抗体,抗核抗体がいずれも陰性であること。
症候の診かた
【1】アルコール性肝硬変:手掌紅斑,くも状血管腫,酒さなど。
【2】アルコール性肝炎:黄疸,著明な肝腫大,腹痛や発熱。
検査所見とその読みかた
【1】血液検査
❶慢性飲酒の所見
■γ-GTPの高値:γ-GTPの半減期は約2週間で禁酒の評価に有用。
■AST/ALT比の亢進。
■平均赤血球容積(MCV)の増大。
■IgAの上昇。
❷アルコール性肝炎
■多核白血球の増多。
■総ビリルビン高値,プロトロンビン活性の低下,クレアチニンの増加:重症例で認められる。
❸アルコール性肝硬変
■血小板の低下。
■PIVKA-Ⅱの上昇:肝臓癌の腫瘍マーカーであるが,アルコール性肝線維化症や肝硬変でも高値を示す。
【2】画像検査
❶アルコール性脂肪肝
■腹部超音波:エコー輝度の上昇。
■CT:肝のCT値の低下。
■MRI:PDFF(proton density fat fraction)の上昇。
❷アルコール性肝線維症,肝硬変:エラストグラフィ(フィブロスキャンやMREなど)で線維化の定量評価ができる。線維化の進行を認めたらより厳格なアルコール摂取制限の介入を行う
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