診断のポイント
「急性胆管炎・胆囊炎診療ガイドライン2018」に記載されている診断基準を,表1図,2図にそれぞれ示す。
【1】胆道系(肝内胆管・総胆管・胆囊)の拡張。
【2】感染徴候の存在:発熱,腹痛,黄疸(胆囊炎では認めない)。
【3】血液検査感染所見の異常:CRP上昇,WBC上昇,プロカルシトニン上昇。
【4】胆道系優位な肝胆道系酵素の上昇(胆囊炎では認めない):ALP,γ-GTP,AST,ALT。
【5】胆道系手術既往,ステント・ドレナージチューブの留置。
緊急対応の判断基準
【1】胆囊炎,胆管炎ともに緊急受診が多く,対応についてはガイドラインで示されている重症度に応じる(表3図,4図)。重症度による治療戦略については図1図,2図に記す。
【2】重症胆管炎・胆囊炎では緊急のドレナージが必要とされている。
【3】敗血症性ショックでは,全身管理が重要である。
【4】重症例での集中治療室での管理,緊急ドレナージに対応不能な施設では可能な施設へ搬送する。
症候の診かた
【1】胆管炎
❶腹痛(心窩部から右側),黄疸,発熱が典型的であるが,必ずしもそろうわけではなく,これらの症状から胆管炎を疑うことが重要である。
❷菌血症を反映し,悪寒戦慄を伴う発熱。
❸ショック,意識障害は敗血症の症状。
❹胆管閉塞による胆汁うっ滞が背景にあり,逆行性感染により胆管炎となる。
❺胆管内圧上昇により大循環に胆汁が流入する。ビリルビンにより黄疸となり,胆汁酸により瘙痒感を生じる。肝排泄が障害されたときのエスケープルートと考えられており,胆汁は腎排泄で尿中に排泄される。
❻胆管炎時には,起因菌も大循環に流入して菌血症となっている。他の感染症と比較して敗血症に移行しやすい病態であることを理解する必要がある。
❼治療としては胆管ドレナージを行い,胆管内圧を下げる,血液中への細菌の供給を断つ,ということが重要である。
【2】胆囊炎
❶発熱と右上腹部