診療支援
診断

高安動脈炎(大動脈炎症候群)
††
Aortitis Syndrome
倉林 正彦
(群馬大学大学院教授・循環器内科学)

診断のポイント

【1】若年女性。

【2】収縮期血圧の左右差(10mmHg以上)。

【3】CRP高値,血沈亢進。

【4】CTやMRIで大動脈に肥厚性病変あるいは狭窄性病変,石灰化病変。

【5】18F-FDG-PET/CTで血管壁への集積。

症候の診かた

【1】若年女性:男女比は1:8で女性に多く,女性での発症のピークは20歳前後である。

【2】発熱:初発時の症状として最も頻度が高い(35%)。リンパ節腫脹を伴うことがある。

【3】血管病変に起因する症状:めまい,失神,上肢のだるさ,視力障害。

【4】心雑音や血管雑音:大動脈弁閉鎖不全症による拡張期雑音,頸動脈の狭窄による血管雑音を聴取することが多い。

【5】血圧:若年者の高血圧では本症を疑う。上肢の血圧の10mmHg以上の左右差や橈骨動脈の脈拍減弱は重要な症候である。腎動脈狭窄があると腹部血管雑音を聴取する。

検査所見とその読みかた

【1】スクリーニング検査

❶炎症によるCRP,血沈亢進,白血球の増加,貧血のほか,ペントラキシン3(PTX3),IL-6,IL-18,あるいはマトリックスメタロプロテイナーゼの高値を認めるが特異的なものはない。2018年の時点でこれらの検査は保険適用ではない。

❷本症はHLA-B52,HLA-B67と有意な関係があるが,HLA検査は保険適用ではない。

【2】画像検査

❶造影CTアンギオグラフィ(CTA)やMRアンギオグラフィ(MRA):血管の狭窄,壁厚の肥厚を認める。壁厚の増加はマカロニサインといわれる。上行大動脈や腕頭動脈に動脈瘤が形成されることが多い。

18F-FDG-PET/CT:診断は感度92.6%,特異度91.7%と高く,診断に有用である。

❸心エコー:大動脈弁閉鎖不全症の診断をする。

確定診断の決め手

【1】画像検査で大動脈(上行,弓部,胸部下行,腹部下行),大動脈の1次分枝,肺動脈に多発性またはびまん性の肥厚性病変,狭窄性

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