診断のポイント
【1】救急診療あるいは集中治療を要する全身性疾患,術後症例。
【2】慢性腎臓病の合併。
【3】高齢者。
【4】急激な血清クレアチニン濃度の上昇。
【5】一定期間持続する尿量減少。
緊急対応の判断基準
【1】高度の酸塩基平衡や電解質異常を呈する場合には緊急透析が必要となる。特に高カリウム血症による心電図異常,pH 7.2以下の代謝性アシドーシスは致命的となる。
【2】身体所見上,高度の脱水が認められる,あるいは明らかな体液過剰がない場合には,末梢静脈路を確保して細胞外液投与を行う。
症候の診かた
【1】脱水所見:いわゆる腎前性急性腎障害(AKI)において高い頻度で認められる。
【2】血圧低下:腎灌流圧低下により腎前性AKIをきたす。
【3】浮腫:院内で発症した急性腎障害に多い。過剰な輸液により生じうる。
【4】尿所見
❶腎前性AKIでは乏尿とともに尿濃縮が,急性尿細管壊死(acute tubular necrosis:ATN)を伴う腎性AKIでは壊死脱落した尿細管上皮細胞のdebrisが肉眼的にも観察できる。
❷横紋筋融解症では尿がワイン色を呈する(ミオグロビン尿)。
検査所見とその読みかた
【1】血清クレアチニン濃度:診断基準に採用されている検査項目であり,相対的な上昇によりAKIの診断と重症度分類がなされる(表1図)。
【2】血中尿素窒素濃度
❶血清クレアチニン濃度と同様に腎障害にて上昇するが,高度脱水の場合には腎臓において尿素再吸収が亢進するため,血清クレアチニン濃度よりもさらに上昇する〔血中尿素窒素/クレアチニン(BUN/Cr)比上昇〕。
❷ステロイド投与などによる異化亢進,消化管出血などによっても上昇する。
【3】尿量:血清クレアチニン濃度とともに診断基準に採用されている検査項目であり,乏尿の程度によりAKIの診断と重症度分類がなされる(表1図)。
【4】尿中ナトリウム濃度
❶腎灌流低下によって