診療支援
診断

長期透析の合併症
Complications of Long-Term Dialysis
鶴屋 和彦
(奈良県立医科大学教授・腎臓内科学)

 長期透析の合併症で最も重要な疾患は,透析アミロイドーシスと慢性腎臓病に伴う骨ミネラル代謝異常(CKD-MBD)である。本項では,この2つの疾患の診断について概説する。

診断のポイント

【1】透析アミロイドーシス:透析アミロイドーシスの臨床的診断は,表1に示す主要症状のうち2項目以上が認められる場合である。主要症状1項目と副症状1項目以上が認められる場合,臨床的疑い例と定義される。

【2】CKD-MBD:診断基準はないが,血清リン(P)値3.5~6.0mg/dL,血清カルシウム(Ca)値8.4~10.0mg/dL,インタクト副甲状腺ホルモン(intact PTH)値60~240pg/mLが管理目標値として推奨されている。

症候の診かた

【1】透析アミロイド―シス:手根管症候群については,ベッドサイドでの診察(正中神経圧迫テスト,Phalenテスト)で評価する。また,骨囊胞や破壊性脊椎関節症については,単純X線写真で評価を行う。

【2】CKD-MBD:副甲状腺ホルモン(PTH)が異常高値となり,アルカリホスファターゼ(ALP)やオステオカルシンなどの骨代謝マーカーが著明に上昇する高回転骨では,骨痛や関節痛を呈する。易骨折性,血管石灰化,異所性石灰化などを生じるため,PTHに対する治療を行う。

検査所見とその読みかた

【1】透析アミロイドーシス

❶原因がβ2ミクログロブリン(β2-MG)の蓄積であるにもかかわらず,透析前血清β2-MG濃度と手根管症候群の発症に関連性はない。

❷一方,β2-MGクリアランス>80%の患者では手根管症候群の発症リスクが有意に低い。

❸したがって,透析前後で血清β2-MG濃度を測定し,β2-MGクリアランスが80%以下であれば,透析条件を上げることが望ましいと思われる。

【2】CKD-MBD:P,Ca,intact PTHの順に管理目標範囲内にあるかどうかを確認し,患者指

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