診療支援
診断

腎移植後合併症
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Complications after KidneyTransplantation
今井 直彦
(聖マリアンナ医科大学講師・腎臓・高血圧内科)

診断のポイント

【1】腎移植患者も慢性腎臓病患者である。

【2】腎移植患者は免疫抑制薬を内服しており,免疫抑制薬の副作用は多岐にわたるが,拒絶反応を起こさずに免疫抑制薬の量を最低限とすることが理想的である。

【3】心血管疾患(約25%),感染症(約18%),悪性腫瘍(約14%)の3つによる死亡が多く,移植腎機能喪失の原因の約40%は移植腎機能が良好な状態での死亡による。

【4】導入期と維持期の区別が重要であり,導入期は免疫抑制薬の調節,急性拒絶反応の治療,感染症の治療が主体となり,維持期には内科的合併症の管理,感染症の治療,悪性腫瘍のスクリーニングが主体となる。

症候の診かた

【1】腎移植後の生活習慣病の管理目標を表1に示す。

【2】移植後高血圧

❶移植患者のほとんどが降圧薬を内服しており,移植後高血圧は生着率・生存率に大きな影響を及ぼす。

❷移植患者に特有の危険因子として移植腎動脈狭窄,カルシニューリン阻害薬の使用などがある。

❸治療の基本は生活習慣の是正,降圧薬である。

❹目標血圧は収縮期血圧/拡張期血圧130/80mmHg未満であり,降圧薬の第1選択薬はACE阻害薬,ARBである。

❺ACE阻害薬やARB開始後に血清Crの上昇を認めた場合には移植腎動脈狭窄を鑑別する必要がある。

【3】移植後脂質異常症

❶移植患者の約5割が脂質異常症治療薬を内服しており,ステロイド,カルシニューリン阻害薬,mTOR阻害薬などの免疫抑制薬の使用などが原因となる

❷管理目標は1次予防ではLDL-C 120mg/dL以下,2次予防では100mg/dL以下である。

❸治療の基本は生活習慣の是正,スタチン製剤である。

❹スタチン製剤と免疫抑制薬,特にCNIとの薬剤相互作用によりスタチン製剤の血中濃度が上昇するため注意が必要である。

❺ピタバスタチンやロスバスタチンはシクロスポリンとの併用が禁忌であり,フルバスタチンやアトルバスタ

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