ウイルス感染症による腎症には表1図に挙げたものがあるが,紙面の関係で,ここでは,HIV関連腎症,B型肝炎ウイルス関連腎症,C型肝炎ウイルス関連腎症,BKウイルス腎症,ヒトパルボウイルスB19について述べる。
[Ⅰ]HIV関連腎症††
診断のポイント
【1】進行したHIV。
【2】細胞性免疫能低下。
【3】黒人に多い。
【4】HIVの腎への直接感染によって生じる。
【5】狭義のHIV関連腎症のほか,HIV関連免疫複合体による膜性増殖性糸球体腎炎(membranoproliferative glomerulonephritis:MPGN),イムノタクトイド腎炎,HIV関連血小板減少性紫斑病なども広義のHIV関連腎症とされる。
症候の診かた
【1】蛋白尿:しばしばネフローゼに準じる量の蛋白尿がみられる。
【2】腎機能低下
❶狭義のHIV関連腎症:治療しない場合1~4か月で末期腎不全となる。
❷広義のHIV腎症:腎機能低下の進行は狭義の場合よりは緩徐である。
検査所見とその読みかた
【1】HIV抗体陽性。
【2】細胞性免疫低下:狭義の場合,CD4陽性T細胞低値(500/μL以下)。
確定診断の決め手
【1】狭義の場合:腎生検で巣状糸球体硬化症虚脱亜型,間質の小囊胞状拡張や間質の炎症。
【2】広義の場合:腎生検でMPGN,イムノタクトイド腎炎,血栓性微小血管症。
【3】HIV遺伝子産物が,ポドサイト,壁側上皮細胞,尿細管上皮細胞で認められる。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
抗HIV薬の多剤併用療法(cART)により,典型的なHIV腎症をみることは非常にまれである。
【1】抗HIV薬(cART)による腎障害
❶尿路結石を起こす薬剤:アタザナビル,ロピナビル/リトナビル合剤,テノホビル。
❷尿細管障害,Fanconi症候群をきたす薬剤:テノホビル。
確定診断がつかないとき試みること
ほかに原因となる疾患を鑑別診断して,抗HIV薬
関連リンク
- 今日の診断指針 第8版/全身性エリテマトーデス
- 今日の治療指針2023年版/急性腎炎症候群(感染に伴う腎炎含む)
- 臨床検査データブック 2023-2024/抗糸球体基底膜抗体〔抗GBM抗体〕 [保] 262点
- 今日の治療指針2023年版/肝疾患に伴う腎病変
- 新臨床内科学 第10版/3 膜性腎症
- 新臨床内科学 第10版/4 膜性増殖性糸球体腎炎
- 今日の治療指針2023年版/抗糸球体基底膜抗体病(グッドパスチャー症候群)
- 新臨床内科学 第10版/2 肝炎ウイルス関連腎症
- 今日の診断指針 第8版/尿細管間質性腎炎
- 臨床検査データブック 2023-2024/免疫グロブリンA〔IgA〕 [小][保] 38点
- 今日の小児治療指針 第17版/急速進行性糸球体腎炎
- 臨床検査データブック 2023-2024/免疫グロブリンM〔IgM〕 [小][保] 38点
- 今日の診断指針 第8版/急速進行性腎炎