診療支援
診断

多発性囊胞腎
Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease (ADPKD)
諏訪部 達也
(虎の門病院・腎センター内科医長)

診断のポイント

【1】腫大腎:腎または肝腫大が進行すると,外見上も腹部膨満が顕著となる。多数の囊胞を有する著明な腫大腎を呈していれば,腹部CTや超音波検査などの画像検査により,診断は比較的容易である。しかし,あまり著明な腫大腎を呈さない患者では,他疾患との鑑別が難しい場合もある。

【2】家族歴:常染色体優性遺伝であり,多くの患者には同疾患の家族歴があるため,家族歴が診断の参考になる。

【3】遺伝子検査:PKD1またはPKD2遺伝子の変異を認めることで診断されるが,本邦においては遺伝子検査は一般的に行われていない。

緊急対応の判断基準

【1】腎不全が進行し末期腎不全に至った場合:人工透析を要する。他の腎疾患による末期腎不全と同様に,一般的な人工透析導入の基準に従うべきである。

【2】急激な激しい腹痛,発熱を認めた場合:腎または肝囊胞の出血や感染を疑う必要があり,腹部CTなどの画像検査を行える医療機関を受診する必要がある。囊胞感染では,なるべく早く抗菌薬治療を開始する必要がある。

症候の診かた

【1】症状の進行:かなり個人差が大きく,多様性のある疾患である。一般的には,30歳頃より高血圧を認めるようになり,40歳台より腹部膨満と腎機能の低下が認められるようになり,60歳頃に末期腎不全,人工透析導入となる。

【2】血尿や腹痛,発熱:腹部膨満が進行するにつれて,囊胞出血や囊胞感染に伴う血尿や腹痛,発熱がみられることが多くなるが,著明な腫大腎をきたす前からこれらの症状がみられることもある。

【3】肝囊胞:腎囊胞だけではなく,肝囊胞も多くの患者で認められ,膵囊胞や卵巣囊胞なども生じることがある。著明な腫大肝を呈する患者は,女性に多いとされている。

検査所見とその読みかた

【1】腹部超音波検査

❶最も簡便に腎囊胞,腫大腎を指摘することができる。

❷しかし,囊胞の正確な数,肝囊胞と腎囊胞の区別をよりはっきりさせるため

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