診療支援
診断

コレステロール塞栓症
Cholesterol Embolization Syndrome (CES)
藤井 秀毅
(神戸大学大学院講師・腎臓内科学部門)

診断のポイント

【1】高度の粥状動脈硬化性病変を有する。

【2】カテーテル検査・治療施行後,大血管手術後の急激な腎機能悪化。

【3】足の指先の暗紫色の変化。

症候の診かた

【1】Blue toe syndrome:外傷や酸素運搬低下をきたす明らかな原因がないにもかかわらず,足趾が暗紫色に変化する(図1a)。重篤な場合は黒色に変化し,壊死をきたすこともある(図1b)。

【2】網状皮疹:下肢に赤色および暗赤色の網目状の皮疹が出現する(図2)。

【3】消化器症状:食欲不振,腹痛,下痢などの症状の他,重篤な場合は消化管出血をきたす。

【4】発熱:必ずしもすべての患者に認められるわけではないが,認める場合がある。

【5】中枢神経症状:一過性脳虚血発作,記憶障害など。

検査所見とその読みかた

【1】末梢血好酸球上昇:急激な上昇が比較的高頻度で認められる。

【2】炎症反応上昇:CRP上昇や血沈亢進が多くの症例で認められる。

【3】補体値低下:局所での補体系の活性化,補体の消費により認めることがある。

【4】CT:胸腹部大動脈の著明な動脈硬化像を認める。

【5】皮膚生検や腎生検:コレステロール結晶を認める。

【6】眼底検査:Hollen-horst斑(黄色,黄褐色のコレステロール結晶)を認める。

【7】頭部MRI:多発性の脳梗塞像が認められる。

確定診断の決め手

【1】突然の腎機能悪化。

【2】腎機能悪化前に誘因がある。

【3】Blue toe syndromeや網状皮疹などの皮膚病変が認められる。

【4】血液検査での炎症反応上昇,発熱を認める。

【5】生検,眼底検査にてコレステロール結晶の証明。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】造影剤腎症:鑑別が難しいことがあるが,炎症反応の有無,下肢皮膚所見の有無,生検および眼底所見が鑑別の助けになる。

【2】急速進行性腎炎()

❶著明な尿潜血で変形赤血球率が高値である場合,抗好中球細胞質

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