診断のポイント
【1】月経がある若年女性で非常に頻度が高い。
【2】高齢者でも悪性腫瘍などに伴いしばしば遭遇する。
【3】ヘモグロビン(Hb)値低下(成人男性13g/dL未満,女性12g/dL未満)に加え,平均赤血球容積(MCV)が低下する。
【4】血清鉄低下,総鉄結合能(TIBC)高値に加え血清フェリチン値低下を認める。
【5】長期間に及ぶと匙状爪(spoon nail)や異食症(pica)など特徴的な所見を呈する場合がある。
症候の診かた
【1】貧血の一般的自覚症状:めまい,易疲労感,全身倦怠感,体動時の動悸,息切れなどが出現する。
【2】特殊な症状:氷や土など普段口にしないようなものを好んで食べる異食症が認められることがある。
【3】身体所見:皮膚や粘膜,特に眼瞼結膜の蒼白が確認される。心肺機能での代償のため,心拍・脈拍数増加,収縮期駆出性心雑音,呼吸数増加を認める。また,浮腫もしばしば認められる。
【4】匙状爪:爪が平坦で中央部がくぼむ特徴的所見が認められることがある。
【5】貧血の進行速度によって症状が大きく異なる。急激に貧血が進行した場合は症状が出現しやすく発見されやすいが,緩徐な進行の場合には症状が出にくく高度の貧血で発見される場合がある。
検査所見とその読みかた
【1】末梢血血算:MCVが80fL未満の小球性貧血となる。血小板数は軽度増加することが多い。
【2】末梢血塗抹標本:全体に色調が薄い菲薄赤血球が認められる。
【3】血清・生化学検査
❶血清鉄低下,TIBC高値およびトランスフェリン鉄飽和度(血清鉄/TIBC×100)低値を呈する。
❷体内総鉄貯蔵量を反映する血清フェリチン値は低下する。
【4】骨髄検査:必須ではないが,施行すると細胞質が乏しく辺縁が毛羽立った好塩基性の赤芽球が多く認められる。鉄染色では,可染鉄がほとんど認められない。
確定診断の決め手
【1】小球性貧血。
【2】血清鉄低下,T