診断のポイント
多くの例は日本甲状腺学会の診断ガイドラインに従って診断できる。
【1】上気道炎症状に引き続き頸部の自発痛・圧痛のある腫瘤。経過中に病変部が移動。
【2】発汗過多,動悸,下痢,食欲不振,易疲労感,体重減少,手指振戦,月経不順など甲状腺中毒症状。
【3】検査ではCRP高値や赤沈亢進などの炎症反応があるが著しい白血球増加はない。
【4】急性期に血清遊離T3(あるいはT3)および遊離T4の高値,甲状腺刺激ホルモン(TSH)抑制があり抗TSH受容体抗体(TRAbやTSAb)は陰性。甲状腺超音波で疼痛部位に一致して低エコー像。
【5】甲状腺中毒症に続き機能低下症となりその後正常化する。
緊急対応の判断基準
まれに発熱,疼痛や甲状腺中毒症による症状により日常生活が障害されると入院加療を必要とする。体温,脈拍数,血圧などバイタルサインにて判断する。
症候の診かた
【1】急性上気道炎の症状に続き頸部の自発痛,圧痛を生じ耳介部への放散痛がある。圧痛のある腫瘤は可動性で甲状腺部に一致し比較的硬い。
【2】発症早期に甲状腺中毒症に一致する微熱,易疲労感,食思不振,手指振戦,動悸,頻脈,発汗過多,皮膚の湿潤などに注意する。
【3】一方,眼球突出やGraefe徴候などBasedow病に特有な眼徴候がないことにも気をつける。
【4】経過中に有痛性腫瘤が反対側に移動する(creeping)ときには亜急性甲状腺炎の可能性が高い。超音波検査で有痛性腫瘤の部位が甲状腺に一致する。
検査所見とその読みかた
【1】甲状腺中毒期
❶血清遊離T3と遊離T4:高値を示し,特に遊離T4の比率が高い(遊離T3/遊離T4比がBasedow病に比べて低い)。
❷TSH:低値で,抗TSH受容体抗体が陰性である。軽症ではTSHのみ低値のこともある。
❸CRP陽性,赤沈亢進を認める。
❹白血球数:正常か軽度上昇にとどまり,軽度の貧血を認めることがある。
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