診療支援
診断

多発性内分泌腫瘍症(1型および2型)
Multiple Endocrine Neoplasia Type 1(MEN1) and Type 2(MEN2)
櫻井 晃洋
(札幌医科大学教授・遺伝医学)

診断のポイント

 MENは,1)複数腫瘍の合併,2)1つの腫瘍とMENの家族歴,3)1つの腫瘍と遺伝子変異の確認,のいずれかで診断が確定する。関連腫瘍を診断した際には他の関連腫瘍の可能性も念頭において必要な検索を行う。以下の場合には,遺伝学的検査(MEN1もしくはRET)の実施を積極的に検討する。

【1】臨床診断基準を満たす。

【2】若年での関連腫瘍発症。

【3】関連腫瘍の多発,再発。

【4】関連腫瘍もしくはそれを疑わせる家族歴。

【5】甲状腺髄様癌(MEN2)。

症候の診かた

【1】MEN1

❶副甲状腺機能亢進症(primary hyperparathyroidism:PHPT):最も頻度が高く,過半数で初発病変となる。患者の半数は20歳台で発症するが,家系内発端者の平均診断時年齢は40歳台である。散発例に比べて高カルシウム(Ca)血症は軽度のことが多い。

❷膵消化管神経内分泌腫瘍(neuroendocrine neoplasm:NEN):未成年での発症は少ないが,インスリノーマのみは学童期から発症しうる。臨床症状は産生ホルモンの種類による。

❸下垂体腫瘍:約25%の患者で診断の契機となる。プロラクチノーマと非機能性腫瘍が多い。女性では無月経で気づかれる。

❹その他

非機能性副腎皮質腫瘍が偶然見つかる。

胸腺NENは,頻度は低いが悪性度が高い。

日本人患者の約40%に顔面血管線維腫を認める。

【2】MEN2

❶甲状腺髄様癌:甲状腺腫瘤以外の臨床症状はなく,血中カルシトニン値の高値で診断される。ほぼ全例が成人前に発症しているが,家系内の発端者は30~40歳台での診断が多い。

❷褐色細胞腫:臨床症状は散発例と同じ。両側性の場合は本症を含めた遺伝性褐色細胞腫を強く疑う。

❸粘膜神経腫:MEN2Bで眼瞼や口唇,舌に発生し,特徴的な顔貌を呈する。

検査所見とその読みかた

【1】MEN1

❶PHPT

複数腺の過形成が特徴

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