診療支援
診断

Werner症候群
††
Werner Syndrome
横手 幸太郎
(千葉大学大学院教授・内分泌代謝・血液・老年内科学)

診断のポイント

 診断基準を表1に示す。

【1】両側性白内障。40歳までに出現。

【2】四肢末梢の皮膚の萎縮・硬化(特に足部)。胼胝や鶏眼を好発し,難治性潰瘍を生じやすい。

【3】早老性毛髪変化(白髪や禿頭など)。

【4】軟部組織(アキレス腱など)の石灰化。

【5】鳥様顔貌(鼻や口先が尖って見え,鳥の嘴を連想させる)。

症候の診かた

【1】20歳前後より上記諸症状がみられるようになる。

【2】そのほか,低身長のことが多く,高調性の嗄声(甲高いしわがれ声)や体幹に比べて四肢が著しく細い,などの特徴がある。

【3】全身像を図1に示す。

検査所見とその読みかた

【1】臨床所見から本症を疑った場合,アキレス腱のX線撮影で踵骨付着部近傍に石灰化を認めれば,ほぼ本症と診断できる(図2)。

【2】高インスリン血症を伴う糖尿病や脂質異常症を,50%以上の症例で認める。

【3】四肢末梢の骨密度低下を示しやすい。

確定診断の決め手

【1】原因となるWRN DNAヘリカーゼの変異を確認する。

【2】末梢血を用いた遺伝子検査が千葉大学にて実施可能である。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

‍ 強皮症():毛髪変化や白内障の存在などから鑑別が可能。

合併症・続発症の診断

【1】骨髄異形成症候群,悪性黒色腫,骨肉腫,髄膜腫などの間葉系腫瘍,そして甲状腺癌の合併が多く,肺癌や膀胱癌もみられる。早期発見により根治も可能である。

【2】内臓脂肪蓄積,耐糖能障害,脂質異常症など,メタボリックシンドロームに似た病態を呈し,その結果として動脈硬化性疾患を生じやすい。

予後判定の基準

【1】悪性腫瘍と冠動脈疾患の合併が生命予後に影響する。

【2】潰瘍を代表とする足部の皮膚病変は疼痛のほか感染を伴いやすく,車椅子生活への移行や下肢切断など,患者の生活予後とQOLを左右する。

治療法ワンポイント・メモ

【1】冠動脈疾患のハイリスク群と考え,脂質,血糖,血圧の適

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