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■アレルギー疾患の最近の動向
山口 正雄
(帝京大学教授・内科学講座呼吸器・アレルギー学)


 国民の約半数が何らかのアレルギー疾患に罹患しており,国民病と称されている。2014年にアレルギー疾患対策基本法が公布,それに続きアレルギー疾患対策の推進に関する基本指針が2017年に告示された。すでに多くの都道府県において拠点病院が指定され,中心拠点病院(国立病院機構相模原病院,国立成育医療研究センター)と協調して診断困難例への対応,専門の医師やコメディカルの育成,市民への啓蒙といった施策が進められている。

 アレルギー疾患は幅広い年代,複数の臓器に広がっていて,1人の患者が複数のアレルギー疾患を有することも多い。小児科,内科,耳鼻咽喉科,皮膚科,眼科が主に診ていくことになるが,患者にとって疾患ごとに通院先が異なると,情報が共有されないことが往々にして起こりうる。アレルギーの診療に当たる医師は,total allergistとして自身の専門領域以外についても知識をもつことが期待されている。

 近年,アレルギー疾患の病態の考えかたが変化してきている。気管支喘息については,Th2リンパ球に加えて自然リンパ球ILC2もIL-5,IL-13の産生源と考えられ,Th2炎症から2型炎症の呼称に置きかえられた。新規治療として抗IgE抗体に加えて抗IL-5,IL-5R抗体,抗IL-4R抗体も効果を上げている。血清IgE,血中好酸球数,呼気NOなどが抗体製剤を選択する際に重要なバイオマーカーとされる。

 アレルギー性鼻炎については,アレルゲンの特定が重要であり治療にてアレルゲン免疫療法に結びつく。欧米ではアレルゲン免疫療法により将来の新たなアレルゲン感作の抑制や新規喘息発症の抑制が示されており,わが国でも多数の患者でアレルギー疾患のnatural historyを変える効果が期待される。

 食物アレルギーについては,小児で卵や牛乳などで即時型アレルギーを生じる患者が多く,QOLの制限が大きい。血液

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