わが国のアンケート調査では,3.6~7%で薬物アレルギー既往を有し,0.5%で重症型の既往があった。アナフィラキシーによる死亡の約半数は,薬物アレルギーによるとされている。
診断のポイント
【1】症状発現と薬剤との間に合理的時間関係があるか:通常,投与開始からアレルギー症状出現までに5日~1か月かかる。
【2】投与中止で症状が軽減したか。再投与された場合に症状が再発したか。
【3】アレルギー頻度の高い薬剤を投与したか。過去にその薬剤によるアレルギーが報告されているか。
【4】皮膚テストで陽性。
【5】アナフィラキシー例では迷走神経反射の除外。
緊急対応の判断基準
【1】アナフィラキシー
❶薬剤投与30分以内で,じん麻疹などの皮膚症状や,腹痛や嘔吐などの消化器症状や,呼吸苦などの呼吸器症状,血圧低下などの循環器症状,など全身症状を示すものと定義される。
❷皮膚症状は90%以上合併する。多くの場合,初めに皮膚症状がみられ,その後,視覚異常,消化器症状,呼吸器症状などが出現する。進行すると,血圧が低下し,アナフィラキシーショックとなる。
❸アナフィラキシー緊急時の治療の第1選択はアドレナリンの筋肉内注射であり,症状改善後も遅発反応に備え,注意深い経過観察が必要である。
【2】重症薬疹
❶Stevens-Johnson症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN)が挙げられる。皮膚,眼粘膜や口唇粘膜などの粘膜移行部から粘膜にかけて著明な紅斑,びらん,水疱,潰瘍を認め,急速に融合し,びまん性紅斑となり,多くは高熱,全身倦怠感などを伴う。
❷表皮剝離の範囲が全身の10%以下の場合にSJS,それ以上の場合にTENと診断する。TENは最重症の薬疹であり,死亡率は30%に及ぶ。
❸このほかの重症薬疹として薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersens