診断のポイント
診断基準を表1図に示す。
【1】遅発性で進行性の中枢神経症状。てんかん,けいれんなどの巣症状を示すことが多い。その他,頭痛,見当識障害,歩行障害など。
【2】脳実質,脳室,くも膜下腔に孤発性,あるいは多発性囊胞(シスト)の存在。
【3】血中や脳脊髄液中の囊虫に対する特異抗体陽性。
【4】囊虫症流行地における居住歴や渡航歴を有する。有意な性差なし。日本人では20~50歳台に多い。
【5】皮下や筋肉内の無痛性腫瘤が単独,もしくは脳囊虫症に合併してみられることがある。
緊急対応の判断基準
【1】てんかんやけいれん発作時:抗けいれん薬投与などの一般的処置。
【2】囊虫症が疑われた場合:専門外来(感染症科)紹介。
症候の診かた
【1】脳囊虫症の場合,遅発性てんかん,けいれん発作,構語障害などの中枢性神経系の巣症状。
【2】病期によって異なるが,MRI T1強調画像では髄液とほぼ同等の低吸収域。頭節はT1強調画像で等,または高信号の壁在結節として描出。
【3】石灰化を伴う場合,MRI T1,T2強調画像ともに低信号。囊胞壁の部分的,またはリング状の増強効果がみられることもある。CTでは低吸収域の孤発性,または多発性囊胞。
【4】転移性脳腫瘍,脳膿瘍,くも膜囊胞,頭蓋内脂肪腫などとの鑑別が必要。
❶転移性脳腫瘍:CTで高吸収,拡散強調画像(DWI)で高信号,造影効果がみられる。
❷脳膿瘍:DWIで著明な高信号,磁化率強調イメージング(SWI)で同心円状の辺縁の低および高信号が特徴。
❸ぶどう状(racemose)囊胞:MRI,CTとも均一な低吸収域を示す。髄液と同じ信号域を示すくも膜囊胞との鑑別が必要。
❹頭蓋内脂肪腫:好発部位は脳梁部で,脳梁部に一致した脳梁欠損を伴う貝殻様石灰化像が特徴的。
【5】皮下の無痛性腫瘤がみられる場合,アテロームとの鑑別が必要。
検査所見とその読みかた
【1】画像検査:病期に応じて
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