診断のポイント
【1】急性中毒の症候は多彩で不定である。症候に特異性が乏しいため,病歴や検査所見などを踏まえて判断する必要がある。特に原因不明の病態症状では他疾患であることが確実でない限り,鑑別診断において常に「中毒の可能性」を念頭におく。
【2】中毒を疑うべき状況や所見には以下のようなものがある。
❶患者自身の毒薬物摂取や曝露の供述,目撃証言。
❷患者周囲残置の毒薬物のPTP(press through package),空箱,空瓶,工場や実験室など使用曝露環境。
❸原因不明の意識障害,循環不全,呼吸不全,けいれん,不自然な経過。
❹吐物などに異臭,皮膚や衣類の異常な着色,びらんなど皮膚粘膜傷害。
❺自殺企図の既往,精神疾患の先行,自傷歴・自傷痕。
❻複数傷病者の同時ないし連続発生(労災事故やテロ事件)。
❼小児や高齢者の家庭内事故。
❽循環不全を伴わない代謝性アシドーシス。
【3】病歴(摂取や曝露状況)供述や現場状況が不明確,不確実であることがまれでない。意識障害を呈すれば病歴聴取ができない。自殺企図では精神疾患が背景にあることが多く正確な状況を把握できない。自然毒中毒は必ずしも摂取や接触の自覚がない。それでもできる限り状況の把握と問診に努めることが診断の道筋となる。
症候の診かた
【1】病歴や証言,状況が伝えられ,あるいは現場に空包,容器が残され該当毒薬物の品名がわかれば,それらをもとに診療を進められるが,原因物質について全く情報がないこともある。分析結果も直ちには得られない。
【2】急性中毒にみられる諸症候を病像としてとらえ,これを「トキシドローム」として,診断診療を進める考えかたがある。トキシドロームはいくつか提唱されているが,化学事故(災害)を主としたものを例示する(表1図)。
検査所見とその読みかた
中毒一般を示唆する検査所見は存在しない。
【1】白血球増多,クレアチンホスホキナーゼ(CPK
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