診療支援
診断

覚醒剤・麻薬中毒
††
Illegal Drug Abuse
上條 吉人
(埼玉医科大学教授・救急科)

診断のポイント

【1】薬物乱用歴。

【2】注射痕,鼻中隔欠損(コカイン)など薬物使用を疑わせる所見。

【3】覚醒剤

❶尿中乱用薬物検査キットであるトライエージTMDOAでAMP(アンフェタミン類)が,またはINSTANT-VIEW®M-1でMETH(覚醒剤)が陽性。

❷中枢神経興奮症状および高体温を伴う交感神経興奮症状。

【4】コカイン

❶トライエージTMDOAでCOC(コカイン)が,またはINSTANT-VIEW®M-1でCOC(コカイン系麻薬)が陽性。

❷中枢神経興奮症状および高体温を伴う交感神経興奮症状。

【5】モルヒネなどのオピオイド類

❶トライエージTMDOAでOPI(オピオイド類)が陽性。

❷針穴(ピンホール)縮瞳,意識障害,呼吸抑制・停止(古典的3徴)。

❸悪心・嘔吐,便秘,麻痺性イレウス(消化器症状)。

緊急対応の判断基準

【1】覚醒剤またはコカイン

❶不穏・興奮,幻覚・妄想,けいれん発作などの中枢神経興奮症状が著しい場合,異常高血圧,異常頻脈などの交感神経興奮症状が著しい場合,40℃を超える高体温は緊急の薬物療法や冷却が必要。

❷脳出血,心筋梗塞,急性大動脈解離,不整脈,急性循環不全,重度の横紋筋融解症などの重篤な身体合併症があり,自施設では対応困難な場合は高次医療機関へ転送。

【2】オピオイド類:重度の意識障害,呼吸抑制・停止がある場合はオピオイド受容体拮抗薬であるナロキソン塩酸塩の静注,または気管挿管および呼吸器管理が必要。

症候の診かた

【1】覚醒剤またはコカイン

❶中枢神経興奮症状:多弁・多動,イライラ,不安・焦燥,不穏・興奮,錯乱,幻覚・妄想,せん妄,けいれん発作,舞踏様症状,ジスキネジアなど。

❷交感神経興奮症状:口渇,発汗,散瞳,高血圧,頻脈など。

❸その他:高体温,振戦,筋攣縮,筋固縮。

【2】オピオイド類

❶古典的3徴:針穴縮瞳,傾眠・昏睡などの意識障害,呼吸抑制・停止。

❷その他:悪心

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?