診療支援
診断

双極性障害
Bipolar Disorder
井上 猛
(東京医科大学主任教授・精神医学分野)

診断のポイント

【1】数週間~数年間続くうつ病および躁病のエピソードが複数回出現し,各エピソード間に病的ではない時期がある。

【2】エピソードの出現周期は規則的(数か月あるいは数年おき)なときもあるが,不規則なときも多い。

【3】約3分の2の患者ではうつ病エピソードで発症するため,発症初期はうつ病として診断され,確定診断には数年を要することが多い。

【4】躁病エピソードのみ反復して,うつ病エピソードが出現しないこともまれにある。

【5】入院しないほどの,あるいは日常生活に著しい障害を与えないほどの軽い躁病は軽躁病とよばれる。うつ病エピソードが出現したことがなくて,軽躁病エピソードのみのときは双極性障害と診断できず,疑い診断にとどまる。

緊急対応の判断基準

【1】1)うつ病が重症で,病識がなくなり,治療を受けられないとき,2)悲観的,絶望的な気持ちが強くなって希死念慮が強くなったとき,3)自殺をはかったときは,患者・家族と緊急の入院治療を相談する。

【2】躁病症状が著しくなって,浪費,対人関係のトラブルなど,患者に大きな損失を引き起こす可能性があるとき,興奮が強くて言動を制御できないときは,患者・家族と緊急の入院治療を相談する。

【3】自殺企図による救急病院への搬送や興奮状態で警察に保護されることなどが,緊急入院のきっかけとなることがある。このような場合は,患者の病識が十分ではないことが多く,家族の同意のもと精神保健福祉法に基づく医療保護入院を適用する。

症候の診かた

【1】うつ病エピソードの診かた

❶うつ病エピソードとは以下にあてはまる状態である。

抑うつ気分,興味関心の低下,睡眠症状(不眠か過眠),食欲症状(食欲不振か亢進),疲労感,自己否定・自責感,集中困難,動作緩慢,希死念慮などの症状が同時に5つ以上ある(抑うつ気分か興味関心の低下のいずれかがあることが必須)。これらの症状が1日中,ほぼ毎日

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