診断のポイント
【1】強迫観念,ないし強迫行為など強迫症状が存在(多くの場合両者が共存)する。
【2】強迫症状が強い苦痛を生じさせ,時間を浪費(1日1時間以上)させ,日常や社会的,職業的機能に著しい障害をきたしている。
【3】強迫症状の出現や内容が,他の精神障害や身体疾患などによるものではない。
【4】強迫症状の不合理性や非現実性の認識(洞察)は,良好な場合から欠如し妄想的な場合まで多様で,また経過中に変動することもあり,この存在が診断上必須ではない。
【5】チック症の既往あるいは併存を認める場合,チック関連(tic-related)と特定する。
症候の診かた
【1】強迫観念
❶侵入的,反復的に絶えず心を占め,無視や抑制を試みても取り除けない思考や衝動,イメージなどである(例:自分の子どもを傷つける心配)。
❷汚染の心配や,「誤って人を傷つけないか」といった攻撃性に関するもの,物事の対称性や正確性を追求するもの,不吉な数字(例:4や9)など数についてのものが多い。
【2】強迫行為
❶強迫観念に伴う不安の緩和,ないし苦痛の予防を目的とし,止めたいという意思をもって抵抗あるいは躊躇しつつも,駆り立てられるように反復する過剰な行動で,心のなかの行為も含む(例:言葉にせず数を数える)。
❷長時間の手洗いや入浴などの洗浄,確認,儀式行為,物を並べる,整頓する,数を数えるなどを多く認める。
【3】チック関連:必ずしも観念や不安を伴わず,不全感に伴う不快や「まさにぴったり」感を追求する前駆衝動から繰り返し行為に至ることが多く,対称性や正確性の追求や儀式行為などの強迫症状,長時間動作を制止し次の行為に移れなくなる緩慢を認めやすい。
【4】回避:強迫症状を誘発する対象や状況を,しばしば避けようとする。
【5】巻き込み:手洗いや確認を強要したり,保証を繰り返し要求したりして,強迫症状に家族などを巻き込むことが多い。