診療支援
診断

摂食障害
Feeding and Eating Disorders
田中 聡
(名古屋大学医学部附属病院精神科・講師)

診断のポイント

【1】摂食または摂食に関連した行動の持続的な障害が存在する。

【2】やせ願望や自分の体型認知の障害が存在することは必須でない。

【3】身体疾患による食事摂取の障害との鑑別が重要だが,身体疾患に併存する場合もある。

【4】神経性やせ症や神経性過食症といった,医療職にとってなじみ深いもの以外にも,いくつかの疾患概念が存在する(表1)。

緊急対応の判断基準

【1】以下の❶~❸に該当する場合などは,総合病院での入院治療が原則として必要である。❹では入院治療の可能性を含めて,精神科医が対応を判断する必要がある。

❶標準体重比55%未満の低体重。

❷急激な(例:週に2kg以上)体重減少。

❸極端な電解質異常・心電図異常・意識障害・急性腹症その他,身体医学的緊急事態。

❹重篤な希死念慮・自殺企図など精神症状の増悪。

症候の診かた

【1】低体重の有無

❶BMI 18.5未満ならば,病的低体重と考える。

❷わが国のガイドラインによれば,標準体重比55%未満は緊急入院適応,65%未満は入院適応である。

【2】食行動異常のあり方

❶食事制限の有無,排出行動の有無(自己誘発性嘔吐や緩下剤乱用など)を,本人からの陳述だけでなく周囲人物からも聞き取る。

❷その他,異食行動の有無,意図せぬ嘔吐の有無などを検討する。

【3】精神病理

❶やせ願望,自己体型認知の障害(やせていることを認知できない),気分に対する体重や体型の過度の影響(わずかな体重増加により絶望するなど体重への過度のこだわり),身体感覚認知の障害(低血糖・貧血・徐脈・低体温などの重篤感を認知できず活動性が維持される)など神経性やせ症・神経性過食症の中核病理の有無。

❷合併する可能性のある精神症状・障害(抑うつ,不安,神経発達障害など)についても聞き取る。

【4】身体症状

❶客観的理学所見と合わせて,便通を含めて主観症状も聞き取る。

❷歯牙の状態もみる。

❸月経については有

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