診療支援
診断

肘周辺の骨折
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Fractures around the Elbow Joint
酒井 昭典
(産業医科大学教授・整形外科学教室)

診断のポイント

【1】受傷機転,症状,単純X線写真から診断は可能。

【2】小児:上腕骨顆上骨折(図1),上腕骨外側顆骨折,上腕骨内側顆骨折。

【3】青・壮年者:高エネルギー外傷による肘関節内粉砕骨折(図2),肘関節脱臼骨折。

【4】高齢者:転倒などの低エネルギー外傷による上腕骨通顆骨折,肘頭骨折。

【5】単純X線写真側面像で脂肪体徴候(fat pad sign)があれば,転位のない亀裂骨折。

緊急対応の判断基準

【1】開放骨折は緊急手術が必要。

❶受傷後6~8時間の最適期(golden periodあるいはgolden time)の時間内に,洗浄,ブラッシング,デブリードマンを行い,創内外の異物,壊死組織,血腫を取り除く。

❷創状態によっては,創外固定で初期対応し,二期的に内固定。

【2】神経・血管損傷を伴った骨折は緊急手術が必要。神経や血管を確認し修復。

【3】小児の上腕骨顆上骨折などにより前腕屈筋群にコンパートメント症候群(Volkmann拘縮)が生じていれば,直ちに筋膜切開。

症候の診かた

【1】疼痛:骨折部に圧痛がある。動作時痛が著明で,正常な可動域を動かすことできない。

【2】腫脹:骨折後徐々に顕著となる。

❶小児の上腕骨顆上骨折などで腫脹が高度になると,前腕屈筋群にコンパートメント症候群を生じることがある。

❷皮膚や爪の色調,手指の感覚,手指の動き,末梢動脈の拍動を注意深くチェックする。

【3】変形:転位の大きい骨折や関節脱臼骨折では,外観上,角状変形や回旋変形を認める。

【4】異常可動性:完全骨折であれば骨折部に異常可動性を認める。

検査所見とその読みかた

【1】単純X線写真:骨折は関節内と関節外に分けられる。

❶Anterior humeral line:上腕骨前縁のラインが上腕骨小頭の中3分の1を通る。側面像で確認する。

❷Radiocapitellar line:橈骨頸部の骨軸が上腕骨小頭の中

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