診断のポイント
【1】受傷機転:膝への直達外力の有無や方向,受傷の際の膝の肢位など。
【2】X線写真における骨折や脱臼の否定。
【3】MRIによる損傷組織の形状・信号異常。
【4】診察(理学)所見,徒手テストにおける評価(健側膝との差)。
緊急対応の判断基準
【1】複合靱帯損傷を伴う脱臼膝では可及的早期の整復が必要である。
【2】脱臼膝において大血管(膝窩動脈)損傷の疑いがあれば,緊急に血管造影検査を行い,循環器内科・外科にコンサルトする。
症候の診かた
【1】腫脹:膝蓋跳動の存在により関節内の液体貯留があると判断される場合は関節穿刺を行って,穿刺液の性状(血液,血性関節液,または関節液)を観察する。靱帯・半月損傷が考えられる膝において多量の関節血腫が認められる場合は(関節内靱帯である)前十字靱帯損傷の存在を考える。
【2】圧痛:内外側の靱帯損傷の場合は靱帯の走行に沿って,また半月損傷に関しては関節裂隙に沿って軽く圧迫を加え,圧痛の存在部位を評価する。十字靱帯損傷は,深部の組織損傷であるため,限局した圧痛は生じない。
【3】靱帯損傷の評価:靱帯損傷における症候のポイントは徒手テストによる不安定性の評価である。
❶評価における注意点
■徒手テストにおいては,大腿骨・脛骨相互間での骨の移動量の評価とともに,最終的に靱帯の緊張によって移動が止まった感(エンドポイント)があったかどうかを評価する。
■ストレス下での骨の移動距離や関節裂隙開大の程度には個人差が大きいので,評価においては,必ず健側膝との比較を行うことが必要である。
❷前十字靱帯損傷:軽度屈曲位で,脛骨近位部に前方引き出しストレスを加えた際の脛骨の前方移動を評価する(Lachmanテスト)。
❸後十字靱帯損傷
■仰臥位膝90度屈曲位で脛骨近位部に後方押し込みストレスを加えた際の脛骨の後方移動を評価する(後方引き出しテスト)。
■ただし本靱帯損傷膝(特に陳旧