診断のポイント
【1】成人例もあるが,10歳以下の男児に多い。
【2】細菌・ウイルス感染症の先行を認めることがある。
【3】両側下腿を好発部位とする。
【4】径2~3mmの多発性の紫斑が主症状である。
緊急対応の判断基準
腹痛や下血など強い消化管症状を伴う場合には,腸重積,腸管虚血・壊死による消化管穿孔を考慮し,消化器外科のある総合病院へ紹介する。
症候の診かた
【1】下腿を好発部位とする,多くは径2~3mm大の紫斑(図1図)で,触ると少し抵抗を感じる(palpable purpura:触知可能な紫斑)。
【2】紫斑の形状はほぼそろっており,水疱や皮膚潰瘍を伴うことは少ない。
【3】紫斑に疼痛はないが,膝や足関節部に関節痛を伴うことがある。
検査所見とその読みかた
【1】紫斑に対するスクリーニング検査:血小板の低下はなく,血漿第ⅩⅢ因子活性の低下を認めることがあるが,その他の血液凝固系検査に異常はない。
【2】紫斑を生じる他の小型血管炎の鑑別のための検査:抗核抗体(ANA),リウマトイド(RA因子),抗好中球細胞質抗体(ANCA),クリオグロブリンは基本的には陰性。血清IgA値の上昇をみることがある。溶連菌感染に続発したものではASOなど高値。
【3】合併症に対する検査:血液・尿検査で腎機能低下,尿蛋白,血尿など腎病変の確認。便潜血の有無で消化器病変の確認。
確定診断の決め手
【1】下腿の触知可能な紫斑。
【2】皮膚生検で白血球破砕性血管炎。
【3】病変部血管壁へのIgA沈着。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】ANCA関連血管炎
❶MPO/PR3 ANCA陽性。
❷特徴的な検査所見,臓器病変。
【2】クリオグロブリン血症性血管炎
❶クリオグロブリン陽性。
❷基礎疾患としてC型肝炎や膠原病。
【3】全身性エリテマトーデス(→),関節リウマチ(→)など全身性疾患関連血管炎:各々の疾患に特徴的な身体・検査所見。
確定診断が
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