診療支援
診断

表皮水疱症
††
Epidermolysis Bullosa
澤村 大輔
(弘前大学大学院教授・皮膚科学講座)

診断のポイント

【1】新生児期から,軽度の外力によって,ほぼ全身の皮膚,粘膜に水疱,びらんを生じる。

【2】皮膚症状以外に,幽門閉鎖,筋ジストロフィー症状を合併することがある。

【3】遺伝性疾患であり,家族内に同症があることがある。

【4】水疱やびらんは繰り返し生じ,その後潰瘍を形成し,瘢痕や萎縮を残すことがある。

症候の診かた

【1】水疱・びらん:外力を受けやすい部位に生ずる。水疱は表皮真皮境界部に形成され,水疱形成部位によって,大きく単純型,接合部型,栄養障害型の3型に大別される(表1)。

【2】瘢痕

❶単純型:水疱が基底膜より浅い表皮内に形成されるため,瘢痕は作らずに治癒する。

❷接合部型:基底膜内に水疱が形成される接合部型は,水疱形成後に萎縮を残す。

❸栄養障害型:水疱が真皮内に形成されるため,その後に瘢痕や稗粒腫を残す(図1)。

【3】癒着:栄養障害型,特に劣性栄養障害型では,水疱やびらん発生後に瘢痕形成を繰り返すと,手指や足趾の癒着を形成する。機能異常をもたらすので,なるべく癒着を起こさないように,非固着性のガーゼなどで,指趾を保護する。

【4】粘膜疹

❶口腔粘膜の水疱やびらんも,認められることがある。開口障害や眼瞼癒着に至ることもある。

❷劣性栄養障害型では,食道粘膜の病変から食道狭窄を起こし,潰瘍からの蛋白の漏出からくる栄養状態をさらに悪化させることもある。

【5】脱毛,歯牙,爪病変:栄養障害型や接合部型で,脱毛や歯牙の異常がみられることがある(図2)。また,優性や劣性栄養障害型では,爪の混濁や変形を多くの症例で認める(図1)。また,体に水疱やびらんの形成がなく,爪の病変が唯一の症状となることもある。

検査所見とその読みかた

【1】光学顕微鏡検査:新しい水疱形成部位から生検する。多くの症例で,表皮下水疱が確認される。

【2】電子顕微鏡検査:表皮真皮境界部を集中的に観察する。

❶裂隙が表皮

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