診療支援
診断

魚鱗癬
~††
Ichthyosis
秋山 真志
(名古屋大学大学院教授・皮膚科学)

 遺伝性の魚鱗癬(非症候性および症候性)と後天性魚鱗癬がある。後天性魚鱗癬は,内臓悪性腫瘍などに併発するデルマドロームである。

診断のポイント

【1】細かい粃糠様鱗屑,大きめの葉状鱗屑(図1),板状の過角化など病型により性状は異なるが,ほぼ全身あるいは広範囲の皮膚に過角化を認める。

【2】発症年齢:出生時あるいは新生児期発症であれば,先天性魚鱗癬である。その他の遺伝性の魚鱗癬はほとんど,小児期に発症する。成人期以降,がん好発年齢での発症例では後天性魚鱗癬を考える。

【3】水疱,びらん,紅斑の有無:水疱,びらんがみられればケラチン症性魚鱗癬が,紅斑が強いときは,先天性魚鱗癬様紅皮症(congenital ichthyosiform erythroderma:CIE)が疑われる(図2)。

【4】家族歴:両親が血族婚であれば,常染色体劣性遺伝性,両親,祖父母に同症があれば,常染色体優性遺伝性,母方の叔父に同症がある男性患者では,X連鎖性劣性遺伝性の病型が疑われる。

【5】他臓器症状:症候性の遺伝性魚鱗癬には,表1に示すそれぞれ特徴的な他臓器症状を呈する多彩な病型がある。

緊急対応の判断基準

 道化師様魚鱗癬などの重症型では,新生児期に,呼吸・輸液・栄養の管理,感染症対策が必要なので,NICUにての加療が望ましい。

症候の診かた

 魚鱗癬に含まれる多彩な病型を,表1に示す臨床的特徴から鑑別することが重要である。症候性の魚鱗癬では表1に示す特徴的な他臓器症状を認める。

検査所見とその読みかた

【1】皮膚病理組織検査

❶尋常性魚鱗癬では表皮顆粒層でのケラトヒアリン顆粒の低形成または欠如がみられる。

❷ケラチン症性魚鱗癬では表皮有棘層に顆粒変性が認められる。

【2】遺伝子変異検索

❶臨床データから,特定の病因遺伝子候補が絞れる場合は,その遺伝子の変異検索を施行する。

❷候補が絞り込めない場合は,全エクソーム解析

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?