診療支援
診断

癤(せつ)・癰(よう)・癤腫症
Furuncle, Carbuncle, Furunculosis
岩月 啓氏
(岡山大学名誉教授)

診断のポイント

【1】癤,癰はともに毛包の急性,深在性黄色ブドウ球菌感染症。

【2】癤は1つの毛包に膿瘍,癰は複数の毛包性膿瘍が融合した病変形成。

【3】癤が同時に多発する場合を癤腫症とよぶ。

【4】浅在性毛包炎,汗腺・汗管細菌感染症のほか,無菌性膿疱を形成する疾患を鑑別。

【5】市中MRSA感染,Panton-Valentine leukocidin(PVL)産生菌に要注意。

緊急対応の判断基準

【1】局所熱感と膿瘍形成が疑われ,発熱などの症状を伴う場合には,皮膚切開,排膿と,ドレナージが必要。

【2】黄色ブドウ球菌を想定した初期治療を行い,同時に起炎菌同定と薬剤感受性検査を実施。

症候の診かた

【1】癤の好発部位は特定できないが,癰は背中,殿部などに好発し,通常単発病変。

【2】癤,癰ともに毛包の深在性細菌感染症であり,毛孔に一致した発赤,腫脹と圧痛を伴う(図1ab)。

【3】化膿が進行すると,毛包内および毛包周囲に膿瘍を形成し,自壊して毛孔から膿排出。

【4】癰は癤が集簇した病変であり,複数の毛孔膿栓や膿排出がみられる。

【5】病変が増大・増数すると発熱,気分不快などの全身症状を伴う。

検査所見とその読みかた

【1】一般血液検査:好中球優位の白血球増多,CRP上昇。

【2】膿汁塗抹標本:好中球に貪食されたグラム陽性球菌を確認(図2)。

【3】細菌学的検査:市中感染型MRSA感染症を念頭においた細菌学的検査と抗菌薬選択。

【4】遺伝子検査:糖尿病,免疫不全などの基礎疾患がなく,多発性で炎症と組織破壊性が強い癤腫症や癰の症例ではPVL遺伝子検査。

確定診断の決め手

【1】毛包深部および周囲の膿瘍形成の証明。

【2】黄色ブドウ球菌の同定(塗抹,培養)。

【3】メチシリン耐性遺伝子(mecA),PVL遺伝子の同定。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】浅在性の毛包系細菌感染症:毛包炎,Bockhart膿痂疹尋常

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