診療支援
診断

変形爪
Nail Deformity
齋藤 昌孝
(慶應義塾大学専任講師・皮膚科学)

診断のポイント

【1】先天性に変形爪がみられる場合:家族歴の聴取に加えて,皮膚,毛髪,歯や骨の異常の有無を確認する。

【2】後天性の変形爪:爪に限局した病変,皮膚疾患に伴う爪病変,全身性疾患に伴う爪の変化の3つに大別される。

症候の診かた

【1】爪甲の形状の変化

❶匙状爪:爪甲の中央が凹形にくぼんだ状態を指し,全体として匙(スプーン)状を呈する(図1a)。鉄欠乏性貧血や甲状腺機能異常による爪甲の菲薄化や脆弱化が原因となることもあるが,職業や日常生活上,指(趾)腹に繰り返し大きな荷重が加わりやすい状況下では匙状爪になりやすい。

❷時計皿爪:末節骨周囲の軟部組織が増大し,爪甲の弯曲が強くなった状態を指し,両者の変化を併せてばち状指とよぶ。ばち状指の原因疾患として,先天性心疾患やうっ血性心不全,肺癌,気管支拡張症などの心肺疾患がよく知られているが,ほかにも炎症性腸疾患などさまざまな疾患が挙げられる。

❸厚硬爪甲:爪甲が厚く硬くなった状態を指す。外傷性の爪甲脱落や抜爪後などに,趾尖部で軟部組織の隆起や骨の偏位が生じ,爪甲の遠位方向への伸長が妨げられる場合や,爪白癬などによる爪甲下角質増殖で爪甲の伸長方向が上向きになった場合に,厚硬爪甲になりやすい。

❹鉤弯爪:厚く硬くなった爪甲が,鉤や山羊の角のように弯曲し,著しく変形した状態を指す(図1b)。厚硬爪甲と同様の理由で厚くなった爪甲が,爪床や爪郭から離れた状態で伸長するようになると,方向性を失って著しく変形する。

❺巻き爪:爪甲の両側縁が内側に向かって過度に弯曲した状態を指す(図1c)。母趾の巻き爪の原因として,窮屈な靴やハイヒールの着用,それと関連して生じた末節骨の変形,外反母趾などが挙げられており,爪甲への慢性的な機械的外力により弯曲度が増す。

❻その他:爪甲と接する部位の病変によって,爪甲剝離や爪甲下角質増殖,爪甲変形(隆起,陥凹,破壊など)

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