診療支援
診断

中耳炎
Otitis Media
小島 博己
(東京慈恵会医科大学教授・耳鼻咽喉科学)

[Ⅰ]急性中耳炎

診断のポイント

 「小児急性中耳炎診療ガイドライン 2018年版」をもとに診療を進める。

【1】急性に発症している。

【2】ほぼ耳痛を伴う。

【3】発熱,耳漏もしばしばみられる。

【4】上気道感染が先行している場合が多い。

【5】圧倒的に小児に多いが成人にもみられる。

緊急対応の判断基準

【1】急性中耳炎の合併症として,敗血症,髄膜炎が疑われる場合には,至急,専門医へ依頼する。

【2】乳幼児では,痛みや発熱により経口摂取量が減少し脱水などによる全身状態の悪化がみられる場合がある。

【3】熱性けいれんの既往がある乳幼児では,急性中耳炎により高熱が出る場合があり,けいれんが誘発されることがあるので注意する。

【4】耳後部に膿瘍形成(急性乳様突起炎)が認められる場合は,耳鼻咽喉科専門医へ依頼する。

症候の診かた

 症状と鼓膜所見から,診断は比較的容易である。

【1】鼓膜の観察(図1)

❶鼓膜の発赤,膨隆,耳漏を認める。

❷中耳腔の膿汁貯留により,鼓膜は赤色ではなく乳白色に膨隆していることもある。

❸ ❶の発赤,膨隆,耳漏の所見は,すべてはそろわないときもある。

【2】臨床症状

❶耳痛,発熱,(小児の場合)啼泣,不機嫌。

❷鼓膜の炎症や中耳腔への膿汁貯留による難聴。

【3】重症度判定の指針(ガイドラインによる)

❶判定のための項目は,年齢,症状「耳痛,発熱,啼泣・不機嫌」,鼓膜所見「鼓膜発赤,鼓膜膨隆,耳漏」である。

❷点数により,軽症,中等症,重症に分類される。

【4】上気道炎の症状を伴っている場合が多い。

【5】乳幼児に多い。

検査所見とその読みかた

【1】細菌学的検査

❶起炎菌は,肺炎球菌,インフルエンザ菌,Moraxella catarrhalisの3種類で70%近くを占める。

❷近年,耐性菌が問題となっているため,可能な限り,細菌学的検査を行うことが望ましい。

【2】純音聴力検査

❶正常範囲,または軽度の伝音難聴を

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?