診療支援
診断

中咽頭癌
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Oropharyngeal Cancer
大上 研二
(東海大学教授・耳鼻咽喉科学)

診断のポイント

【1】嚥下時違和感,咽頭痛で発症し,進行すると嚥下困難や構音障害。

【2】頸部腫瘤が初発症状のことも多い。

【3】飲酒歴,喫煙歴,性交渉が関連する。

【4】50~60歳台の男性に多い。

【5】ヒトパピローマウイルス(HPV)関連癌はより若年層に発症する。

緊急対応の判断基準

 基本的には緊急搬送の必要はないが,以下の場合,早急に耳鼻咽喉科専門施設へ移送する。

【1】呼吸困難

【2】咽頭出血

症候の診かた

【1】咽頭症状:早期の段階では,嚥下時の違和感や咽頭痛などの非特異的な症状を呈する。

【2】頸部腫瘤

❶原発巣の症状がなく,頸部リンパ節腫脹のみを訴えることも多い。上・中頸部が多く,両側性のことも多い。

❷亜急性の経過で,痛みを伴うことは少なく,硬い,あるいは周囲との癒着のため可動性が悪いものが多い。

❸安易な頸部腫瘤の生検は厳禁で,まず原発巣の検索を優先する。

【3】HPV関連中咽頭癌は原発巣は小さくても,多発のリンパ節転移(多くは囊胞性)をきたしやすい。そのため原発不明の頸部リンパ節腫脹として発症することも多い。

検査所見とその読みかた

 視診,内視鏡所見,画像検査で判断する。病理組織学的検査で確定診断する。

【1】咽頭視診・触診

❶扁桃の左右差や粘膜表面の凹凸不整が腫瘍を疑う所見である(図1)。

❷触診で硬いことが多く,扁桃や舌根などは触診して左右差があれば腫瘍の存在を疑う。

❸腫瘍は易出血性である。

【2】咽頭・喉頭の内視鏡検査

❶上部消化管内視鏡検査でも経口的,経鼻的に咽頭を観察する機会が増えている。

❷扁桃や軟口蓋,舌根の粘膜所見の左右差,narrow band imaging(NBI)などを併用することにより,白色光では視認しにくい腫瘍表面の微細な血管や表面構造の変化を早期の表在癌の特徴として描出することができるようになった。

【3】頸部CT

❶原発巣の進展範囲と頸部リンパ節について評価が可能で

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