診療支援
診断

前立腺炎様症候群・男性下部尿路症状
Prostatitis-like Syndrome and Male Lower Urinary Tract Symptoms
髙橋 聡
(札幌医科大学教授・感染制御・臨床検査医学講座)

 前立腺炎様症候群としては,慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群を想定して記載する。

診断のポイント

【1】20歳以上の男性。

【2】骨盤痛(会陰,陰囊,尿道,大腿)と頻尿・排尿時不快感。

【3】他疾患を除外する(除外診断)。

【4】慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群として米国国立衛生研究所慢性前立腺症状スコア(NIH-CPSI)でスコア化。

緊急対応の判断基準

 上記の症状に,発熱,膿尿,直腸診での前立腺の腫脹・熱感を認めた場合は,急性細菌性前立腺炎を念頭におき,排尿状態の確認,血液検査,細菌学的検査,抗菌薬投与などが必要になる。

症候の診かた

【1】特徴的症状:下腹部から会陰,陰囊,尿道など,陰部を中心とした疼痛ないしは不快感のほかに,頻尿,排尿時不快感などの排尿症状や射精時痛など多岐にわたる。

【2】他疾患の除外:尿路性器および骨盤内感染症,肛門周囲疾患,前立腺肥大症,骨盤内悪性疾患,精神疾患などとの鑑別を要し,これらを除外する。

【3】UPOINTSによる表現型分類:排尿機能(U),心理社会学的要素(P),膀胱・前立腺の異常(O),感染(I),神経症的要素(N),骨盤底筋群の緊張性(T),性機能障害(S)の症状(要素)があるかどうかを確認し治療方針を決める。

検査所見とその読みかた

 スクリーニング検査:検尿沈渣で高度の膿尿を認める場合は,尿路性器感染症・性感染症を想定する。膿尿を認めない場合は,下腹部・外陰部の診察と直腸診へ進む。

確定診断の決め手

【1】原則として除外診断である。

【2】発熱・膿尿・血液検査での炎症所見により尿路性器感染症を,感染機会の有無の確認により性感染症などの感染症を除外する。

【3】排尿症状が強い場合,尿勢低下,残尿,前立腺肥大の有無などの所見により前立腺肥大症を除外する。

誤診しやすい疾患との鑑別ポイント

【1】急性細菌性前立腺炎

❶直腸診で前立腺の熱感,腫脹が著明。

❷末梢血白血球数の

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