診療支援
診断

囊胞性腎疾患
Renal Cystic Disease
桶川 隆嗣
(杏林大学教授・泌尿器科)

診断のポイント

【1】常染色体優性多発性囊胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD)

❶最も頻度の高い遺伝性囊胞性腎疾患である。

❷両側腎臓に多数の囊胞が進行性に発生・増大し,腎臓以外の種々の臓器にも障害が生じる。

❸加齢とともに囊胞が両腎に増加,進行性に腎機能が低下し,60 歳までに約半数が末期腎不全に至る。

【2】常染色体劣性多発性囊胞腎(autosomal recessive polycystic kidney disease:ARPKD)

❶頻度は出生10,000~40,000 人に1 例と推測され,新生児期に症候を示す。

❷現在では,生後早期の適切な管理と末期腎不全治療の進歩により,重症肺低形成を伴う新生児以外は長期生存が可能になっている。

症候の診かた

【1】ADPKD(表1)

❶自覚的な初発症状として,腹痛・背部痛,血尿,腹部膨満などがある。他覚的には,健診などで指摘される高血圧も初発症状として重要である。

❷30~40 歳台まで無症状のことが多い。

❸腎腫大が進行すると消化管圧迫による食欲不振,通過障害,低栄養が出現することがある。

❹肉眼的血尿は経過中に半数近くの症例で経験される。

【2】ARPKD

❶発症した新生児には腹部膨隆がみられ,腎臓は巨大化して硬く,表面平滑で左右対称である。

❷重症の新生児では,腎機能障害および羊水過少が出生前に与える作用により肺低形成をきたすことが多い。

❸5~10歳の患児では,食道胃静脈瘤や脾機能亢進症など,門脈圧亢進症の徴候が現れる。

❹青年期に発症した患者の場合,腎腫大はあまり著明ではなく,腎機能不全は軽度から中等度で,門脈圧亢進症の関連症状が主要症状となる。

確定診断の決め手

【1】ADPKD(表1)

❶家族歴を聴取し,家系図を作成する。高血圧,脳血管障害,尿路感染症,発熱,腰痛などの既往症

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