診断のポイント
【1】前立腺特異抗原(PSA)測定は,前立腺癌の診断に有用で,50歳を過ぎたら1度はPSAを測定する。
【2】家族歴は罹患リスクを約2.4~5.6倍に高めるので,家族歴のある場合は40歳から受診機会を提供することが望ましい。年齢,人種,食生活なども前立腺癌の危険因子とされる。
【3】PSAの基準値は年齢層別に考える(50~64歳:3.0ng/mL,65~69歳:3.5ng/mL,70歳以上:4.0ng/mL)。
【4】直腸診上,前立腺癌の硬度は石様硬で,経直腸式前立腺エコー(TRUS)で低エコー領域として観察される。
【5】前立腺癌の診断はPSAによるスクリーニング,生検による確定診断,画像診断による病期診断からなる。図1図に前立腺癌診断アルゴリズムを示した。
症候の診かた
【1】早期前立腺癌では自覚症状に乏しい。
【2】排尿障害や血尿,排尿痛などは前立腺癌の局所浸潤に伴い生じる。
【3】骨転移に伴う腰痛や坐骨部痛を主訴に受診する場合がある。
【4】前立腺癌と前立腺肥大症はともに高齢者に多く,症状から両者の鑑別は困難である。
検査所見とその読みかた
PSAは前立腺上皮が産生する前立腺特異的(前立腺癌に特異的ではない)セリンプロテアーゼである。
【1】PSAスクリーニング
❶感度は高いが,特異度が40%前後と低いことが欠点である。PSAは前立腺癌の存在・進行以外に炎症,年齢,前立腺体積にも依存して変化する。
❷PSAは前立腺組織構築の破壊に伴い血中へ流出する。前立腺炎や前立腺肥大症でも上昇する。PSA値の上昇はバルーン留置後にも生じる。
【2】PSAによるスクリーニング後,TRUS,MRIで精密検査を行う。
❶年齢階層別PSA基準値を参考にして精密検査の必要性を判断する。
❷TRUSで前立腺癌の局在診断が困難な場合はmultiparametric MRI(T2強調画像,ダイナミック造影,拡散強