診断のポイント
【1】内診。
【2】経腟超音波・MRI・CT。
【3】組織学的多様性。
【4】あらゆる年齢。
【5】腫瘍マーカー。
緊急対応の判断基準
緊急手術が必要となるのは,卵巣腫瘍茎捻転や破裂の場合である。特に茎捻転の場合が多いと思われる。主訴としては,突然の激しい腹痛である。
【1】内診・超音波検査を施行し,圧痛を伴う卵巣腫瘍を認めた場合,卵巣腫瘍茎捻転や破裂の疑いがある。
❶茎捻転の場合:5cm以上の大きさの卵巣腫瘍で頻度が高くなる。
❷卵巣腫瘍の破裂の場合:多くは,子宮内膜症性卵巣囊腫(チョコレート囊胞)であり,問診も重要となる。
【2】一般的には,鎮痛薬を投与しても無効の場合が多いので緊急性の判断基準の一助となる。
【3】採血では炎症反応は遅れて上昇してくることが多いので,あくまでも身体所見を優先する。
症候の診かた
【1】腹痛:卵巣腫瘍の茎捻転,破裂,感染,周囲臓器への浸潤のために起こることが多い。特に茎捻転の場合は,激しい腹痛を伴い鎮痛薬が無効の場合が多く,緊急手術となる。
【2】発熱
❶卵巣腫瘍に感染が伴った場合,発熱を認める。この場合,感染部位より腫瘍の破綻をきたすこともある。
❷子宮内膜症性卵巣囊腫の場合など,癒着を伴っているケースで多くみられる。
❸抗菌薬の投与にて,症状の経過を慎重にみていくが,発熱が軽快しない場合などは,緊急手術となることもある。
【3】腹満:大きな卵巣腫瘍が存在する場合,経腹超音波検査で,診断が可能なこともある。また,腹水が貯留している場合も,同様の検査で容易に診断が可能である。
【4】排尿障害:卵巣腫瘍が膀胱を圧排するために起こる症状の1つである。CT,MRI検査などで膀胱の圧排像が描出される。
【5】呼吸困難:卵巣癌で,胸水貯留を伴っている場合や,巨大な腫瘍が横隔膜を挙上している場合に起こる。また,卵巣癌を伴っている場合の肺塞栓症(pulmonary embol