診断のポイント
【1】BRCA1あるいはBRCA2遺伝子の生殖細胞系列病的変異をもち,乳癌および卵巣癌の好発家系で常染色体優性遺伝形式を示す。
【2】BRCA1変異保持者の乳癌および卵巣癌の累積罹患リスクは,70歳で乳癌が70%,卵巣癌が40%,BRCA2変異保持者の累積罹患リスクは,乳癌が49%,卵巣癌が18%と報告されている。
【3】欧米のデータではBRCA変異を有する男性では一般集団より高頻度に前立腺癌を発症する。
【4】既往歴または家族歴から遺伝性乳癌・卵巣癌(HBOC)を疑う場合,選択肢としてBRCA遺伝学的検査に関する情報提供を行う。
【5】日常診療で扱う卵巣上皮性悪性腫瘍の約15%,乳がんの約5%にBRCA遺伝子の生殖系列変異を認める。
【6】BRCA遺伝学的検査は生殖細胞系列の遺伝学的検査で,がん罹患患者だけでなく,その家族にも影響する検査であるため,遺伝カウンセリングのプロセスの中で実施するのが原則である。
検査所見とその読みかた
【1】遺伝学的検査についての情報提供:臨床的にHBOCを疑う場合,BRCA遺伝学的検査についての情報提供を行う。
❶情報を提供すべき対象者の拾い上げ基準は国際学会などが公表しているガイドラインや,BRCAPROなどの遺伝子変異の保有率を予測するツールを用いる。
❷全米総合癌センターネットワーク(NCCN)のガイドラインでは2段階の拾い上げを推奨し,1次拾い上げで1つでも該当した場合,遺伝性腫瘍の専門家による詳細な2次評価を行い,該当者には遺伝学的検査に関する情報を提供することを勧めている。
❸ただし,日本人のHBOCの疫学情報はいまだ十分蓄積されていないため,頻度や臨床的特徴は十分に解明されていない。日本HBOCコンソーシアムによる問診票を表1図に示す。
【2】BRCA遺伝学的検査
❶卵巣癌
■日常診療で扱う卵巣癌の約15%に生殖系列系BRCA変異を認める
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