診断のポイント
【1】日本産科婦人科学会の定義では,「避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにもかかわらず,妊娠の成立をみない場合」(一般的には1年間)。
【2】米国生殖医学会(ASRM)でも,不妊症と診断される期間については「1年」としているが,カップルのどちらか,もしくは両者に明らかな不妊原因が存在している場合は,不妊期間の長短にかかわらず,不妊症と診断してよいとしている。
緊急対応の診断基準
不妊症では緊急対応が必要な場合はないが,以下の場合は生殖補助医療技術(assisted reproductive technology:ART)などの加療が必要なので不妊治療専門施設にすみやかに紹介する。
【1】両側卵管の通過障害が存在している場合。
【2】無精子症または高度の乏精子症,精子無力症,奇形精子症。
【3】女性年齢が42歳以上。
【4】諸検査で不妊原因が明らかでなく,長期間不妊である症例。
【5】高度の子宮内膜症症例。
症候の診かた
問診:不妊期間,月経歴,妊娠・分娩歴,婦人科疾患の既往歴,全身疾患の既往および治療歴,腹部手術の既往,性交,過去の不妊検査・治療歴,生活様式,家族歴などに関して十分な時間をかけ詳細な問診を行う。
検査所見とその読みかた
不妊症の原因は排卵障害,卵管障害,頸管因子を含む子宮因子,乏精子症などの男性因子,免疫因子,子宮内膜症など多岐にわたる。後述する諸検査により不妊原因の検索を行う。ただし,原因不明不妊(機能性不妊)とされるものが,約20~30%程度存在する。加齢が原因と考えられるものも多数含まれていると考えられるので注意を要する。
【1】スクリーニング検査
❶卵管因子の診断のための子宮卵管造影(HSG)と,男性因子の診断のための精液検査:スクリーニング検査として行うことを世界保健機関(WHO)では推奨している。
❷基礎体温
■基礎体温を連日測定し,それを折れ線