診断のポイント
更年期に現れる多種多様な症状のなかで,器質的変化に起因しない症状を更年期症状といい,更年期症状のなかで日常生活に支障をきたす病態を更年期障害と定義する。
【1】更年期(閉経の前後5年間の10年間)に現れる。
【2】器質的疾患や精神的疾患に起因しない。
【3】日常生活に支障をきたしている。
症候の診かた
【1】「更年期」に現れていること
❶閉経は,子宮摘出後などの場合には,ホルモン的に卵胞刺激ホルモン(FSH)値40mIU/mL以上かつE2(エストラジオール)値20pg/mL以下をもって判断しているが,有子宮者ではあくまで月経の12か月以上の停止により判定される。
❷日本人の閉経年齢の中央値は50.54歳であることから,更年期はおおまかには40~60歳の間に収まる。
❸エストロゲンは性周期中の時期によっても大きく変化することなどから,ホルモン値によって閉経を予測することは困難である。このため,閉経と診断される前の状況では更年期かどうかを判断することは難しく,相当年齢であれば更年期として対応する。
❹逆に更年期を過ぎてからの愁訴あるいは若年女性など年齢的に考慮しにくい場合には更年期障害とはいえず,メンタルな要因を考える。
【2】更年期障害の症状:更年期障害は一種の症候群であり,症状は300以上あるといわれている。
❶のぼせ・ほてりや発汗といったいわゆるホットフラッシュが有名であるが,わが国では易疲労感や肩こりが多い。しかし,この症状があれば更年期障害と診断できるような特徴的な症状はない。
❷程度の差はあれ,ホットフラッシュなどの血管運動神経障害様症状は認めることが多く,精神的疾患との鑑別に役立つ。
【3】鑑別診断:最も重要であり,愁訴を引き起こす可能性のある疾患を考慮する。
検査所見とその読みかた
【1】スクリーニング検査
❶問診による月経歴やサプリメントを含む服薬の確認,末梢血検査,肝機能検