診断のポイント
妊娠20週以降の経腟超音波検査で内子宮口を覆う胎盤所見で診断する。
緊急対応の判断基準
【1】前置胎盤の診断がついていて,自宅で出血した場合は直ちに来院させ,入院管理とする。出血量が多いと判断した場合は救急車を要請してもよい。
【2】少量の出血であれば入院安静での自然止血を期待する。コントロールが不良な出血を止めるには帝王切開しかない。
【3】自施設で前置胎盤の手術および新生児管理ができない場合は,緊急帝王切開は予測不能であるため,直ちにそれらが可能な施設に搬送する。
症候の診かた
【1】警告出血
❶前置胎盤の診断後初めての少量の出血を警告出血とよび,今後多量出血になる可能性があると考える。
❷警告出血がなく,最初から多量出血となることもある。
【2】子宮収縮:前置胎盤に子宮収縮が起こると子宮口が開くため,出血する可能性が高くなる。なるべく安静を指示する。
検査所見とその読みかた
【1】出血がないかぎり自覚症状はない。よって,中期の妊婦健診の超音波検査で前置胎盤のスクリーニングが行われる。
【2】内子宮口と胎盤の位置関係を観察することで診断する。
確定診断の決め手
【1】妊娠20週以降の経腟超音波検査の際に内子宮口を覆う胎盤所見で診断するが(図1図),子宮下節の開大後に確定診断を行う必要がある。
【2】子宮下節の開大が不確かな場合は,妊娠32週以降の超音波所見をもって診断とする。
誤診しやすい疾患との鑑別ポイント
【1】低置胎盤
❶妊娠週数の早い子宮では,子宮下節が閉じており,子宮筋の伸展が少なく,あたかも内子宮口近くに胎盤が存在するように誤診することがある。
❷妊娠経過に伴って,胎盤が子宮口から離れていくように描出されること(migration)が知られており,低置胎盤や常位胎盤となることがある。
❸この鑑別のためには,十分に子宮下節が開大したことを確認したのちに診断するとよい。