診断のポイント
妊娠反応が陽性である女性患者において以下の所見を認める。
【1】子宮腔内に胎囊を確認できないand/or子宮腔外に胎囊を認める。
【2】急性腹症を示す。
【3】ショック症状(頻脈,低血圧,意識低下)を示す。
【4】多量の腹腔内貯留液を認める。
【5】流産手術摘出物に絨毛が確認されない。
緊急対応の判断基準
【1】ショックである場合,多量の腹腔内出血を認める場合は,緊急手術を要する。
【2】自施設で対応できなければ,直ちに緊急手術,輸血が可能な施設への搬送を考慮する。
症候の診かた
【1】最終月経からの週数,性器出血の有無,腹痛の有無に注目すべきである。
【2】性器出血を患者本人が月経と思い込んで妊娠を想定していないこともあるので注意が必要である。すなわち本人申告の最終月経をうのみにしてはいけない。
【3】予定月経の頃に少量出血,基礎体温の低下がみられることも多く,不妊治療中の患者に対して次周期の卵巣刺激が開始されていることもある。
検査所見とその読みかた
【1】急性腹症を伴うショック症状を示す女性患者には必ず尿妊娠反応の有無を確認し,陽性の場合はその時点で異所性妊娠を鑑別のトップに挙げる。
【2】妊娠反応が陽性で,経腟超音波検査で子宮腔内に胎囊を認めないが子宮腔外の胎囊の存在も確定できない場合,血中hCGを測定する。
❶hCG 2,000IU/L以上であれば強く異所性妊娠を疑う。
❷hCG 2,000IU/L未満であれば,正常妊娠初期,流産,異所性妊娠の3通りの可能性がある。
確定診断の決め手
【1】経腟超音波検査で子宮腔外に胎囊が確認できれば,異所性妊娠は確定的である。
【2】子宮内容除去術が施行され遺残がないにもかかわらずhCGが上昇傾向である場合も診断は確定的である。
【3】hCG 3,000IU/Lを超えてなおも子宮腔内に胎囊が確認できない場合も診断は確定的である。