診断のポイント

【1】全身状態の評価：頻脈，血圧低下，無呼吸，皮膚色蒼白などのショック状態の有無を評価し，その他，活動性低下，多呼吸，浮腫，体重減少の有無をチェックする。

【2】嘔吐の経過と吐物の性状：経口摂取の有無と嘔吐の頻度，および吐物の性状(胆汁様，胃液様，血性)を確認する。

【3】腹部の理学所見：膨満，腸雑音亢進，反跳痛，筋性防御，胃蠕動亢進，体表からの腸蠕動の観察，腹水貯留による波動などの所見の有無を評価する。

【4】腹部画像検査

❶単純X線写真：拡張した腸管ガス像，固定した腸管ガス像，腸管ガス像の減少・消失，腹腔内free air(football sign)，門脈内ガス像，腸管壁内ガス像の有無を評価する。

❷エコー検査：腸管内液体貯留による腸管拡張，腸管壁内ガス像，門脈内ガス像，腹水，腸間膜動静脈の渦状像(whirlpool sign)，副腎過形成像(脳回様像)の有無を評価する。

【5】血液検査(血算，生化学)での炎症所見，電解質異常，血液ガス分析での代謝性アシドーシスや乳酸値の上昇の有無を確認する。

緊急対応の判断基準

　嘔吐に加えて，下記の状態を呈する場合は，急速輸液等によるショックなどへの緊急対応を行いながら，すみやかな原因検索とそれに応じた対応を行う。

【1】全身状態の悪化：頻脈，血圧低下，多呼吸，無呼吸，(ショックの徴候)，皮膚色蒼白。

【2】腹部理学所見：高度の膨満，透光試験で腹腔内にfree airを認める。

【3】腹部単純X線写真：腹腔内free air(football sign)，門脈内ガス像，腸管壁内ガス像(pneumatosis)。

【4】腹部エコー検査：腸管壁内ガス像，門脈内ガス像，腸間膜動静脈の渦状像(whirlpool sign)。

【5】吐物の量・性状：大量の血性吐物，(大量の下血)。

【6】血液検査(血算，生化学)での高度の炎症所見，高度の電解質異常，血液