診療支援
診断

小児の急性脳症
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Acute Encephalopathy in Childhood
前垣 義弘
(鳥取大学教授・脳神経小児科)

診断のポイント

【1】乳幼児。

【2】発熱を伴う感染症に併発。

【3】24時間以上持続する意識障害。

【4】頭部MRIで脳浮腫を認める。

【5】脳炎や髄膜炎など,ほかの疾患が否定された場合に診断される。

緊急対応の判断基準

【1】けいれん重積状態で発症することが多い。第1および第2選択薬で抑止できない難治性けいれん重積状態の場合は,高次医療機関へ搬送する。血液ガス分析と血糖・電解質測定は行う。

【2】呼吸や循環などの全身状態が悪い場合には,高次医療機関へ搬送する。

【3】意識障害が24時間以上持続する場合は,専門医療機関へ搬送する。

症候の診かた

 発熱を伴う感染症の経過中に意識障害をきたした場合に,急性脳症を疑う。急性脳炎や細菌性髄膜炎などほかの疾患が否定されたときに急性脳症の診断に至る。

【1】発熱:ほとんどがウイルス感染症であり,インフルエンザ,突発性発疹,ロタウイルス胃腸炎,RSウイルス感染症の順に多い。

【2】けいれん発作:全身けいれんや半身けいれんが主で,重積発作が多い。

【3】意識障害:意識障害は必須であり,けいれんに引き続いて生じることが多い。

❶一過性(図1a):意識障害は数日で改善する予後良好な経過で,けいれんを伴わないこともある(例:可逆性脳梁膨大部病変を有する軽症脳炎・脳症)。

❷二相性(図1b):けいれん重積後に意識障害が生じ徐々に改善するが,3~7病日に短い発作の群発をきたし,意識障害が増悪する〔例:けいれん重積型(二相性)急性脳症,片側けいれん・片麻痺症候群〕。

❸持続性(図1c):深昏睡の状態が持続する予後不良のタイプで,けいれんを伴うことが多い(例:急性壊死性脳症,出血性ショック脳症症候群,Reye症候群,Reye様症候群)。

【4】全身状態:高体温あるいは低体温,頻脈あるいは徐脈,多呼吸あるいは呼吸不全は,全身炎症反応(サイトカインストーム)を示唆する。ショックや出血

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