診断のポイント
小児脳腫瘍を疑うのは,以下のようなときである〔英国のHeadSmart Projectを参考にした(https://www.headsmart.org.uk▶)〕。
【1】新たに発症した持続する頭痛(特に起床後早朝の頭痛)が2週以上続くとき(乳幼児は頭痛を訴えないので不機嫌・嗜眠・頭囲拡大で判断することが必要)。
【2】悪心・嘔吐が2週以上続くとき。
【3】眼症状(屈折異常ではない視力低下,眼球運動の異常,複視)が2週以上続くとき。
【4】2週以上続く運動機能の異常もしくは運動機能の退行がみられたとき。
【5】成長障害,思春期早発,思春期遅発,多飲多尿などの症状が複数合併してみられたとき。
緊急対応の判断基準
【1】腫瘍による頭蓋内圧亢進症,水頭症,腫瘍出血などによる意識障害や,脳ヘルニアを示唆する徴候(瞳孔不同など)を認める場合:緊急対応(浸透圧利尿薬の使用もしくは外科的処置)が必要。
【2】傍鞍部腫瘍の視神経圧排で急速に進行する視力視野障害の場合:可及的に減圧手術を行わないと回復が得られない。
【3】けいれん重積を呈する場合:抗けいれん薬の静注が必要で時に呼吸管理を要する場合もある。
【4】脊髄病変で,四肢麻痺や膀胱直腸障害などの脊髄症状がみられる場合:緊急対応(減圧)を要する。
症候の診かた
【1】頭蓋内圧亢進症
❶典型的には頭痛・嘔吐・うっ血乳頭だが,典型的な症状を呈さない場合も多い。頭痛を訴えられない年少児では不機嫌・易刺激性などがみられ,進行すると嗜眠傾向となる。
❷早朝頭痛(morning headache)が有名だが,一方で頭痛は早朝に限らないので,頭痛出現の時間帯のみでの診断はできない。
【2】眼症状
❶視神経の直接の圧迫でもうっ血乳頭でも視力低下をきたす。前者の場合視野障害を伴う場合も多い。
❷後頭蓋窩腫瘍の場合など非特異的な眼振を比較的早期から認めることがあり重要である