特に多い特発性ネフローゼ症候群に絞って解説する。
診断のポイント
【1】1年間に小児10万人中6.5人が特発性ネフローゼ症候群(以下,特発性)を新規発症する。好発年齢は3~4歳。男児:女児は2:1。
【2】小児ネフローゼ症候群の約90%は特発性。残りは糸球体腎炎による二次性。特発性は微小変化型が約90%。次いで巣状分節性糸球体硬化症。
【3】高度蛋白尿〔夜間蓄尿≧40mg/時/m2または早朝尿で尿蛋白/尿クレアチニン(Cr)比≧2.0g/gCr〕かつ低アルブミン(Alb)血症(血清Alb≦2.5g/dL)で診断する。
【4】小児ネフローゼ症候群のほとんどは,治療反応良好な微小変化型であり,プレドニゾロン(PSL)への治療反応性で診断する。
緊急対応の判断基準
【1】急性腎障害
❶小児の年齢・性別ごとの血清Cr正常値に留意(表1図)。
❷11歳までは男女とも,血清Cr=身長(m)×0.3mg/dLが概算正常値。
❸血管内脱水などに起因する軽度急性腎障害の合併は比較的多い。
❹一方,高度急性腎障害はまれだが,透析可能な施設への紹介を考慮。
【2】高血圧緊急症:高血圧脳症である可逆性白質脳症は急性腎障害,ステロイドやカルシニューリン阻害薬などが危険因子。
【3】敗血症を含む重症感染症
❶免疫グロブリンの尿中漏出,高度の浮腫,ステロイド薬や免疫抑制薬により易感染性を呈する。
❷肺炎球菌による腹膜炎はまれだが要注意。
【4】血栓症:まれだが動脈,静脈の両方に血栓症を生じうる。
症候の診かた
【1】眼瞼や下腿の浮腫,腹水・腹部膨満,胸水を認める。
【2】高血圧,腹部膨満や胸水による呼吸障害によるバイタルサインの変化に常に注意する。
検査所見とその読みかた
【1】血清Crに注意(表1図)。
【2】低蛋白血症(総蛋白,Alb,IgGが低下),脂質異常症(コレステロール,トリグリセリドが上昇)を認める。
【3】高度蛋白尿と同時に濃縮尿